大日本印刷が「万年割安」の汚名返上に動き出すもなお足りぬ資産売却! | 体脂肪率4.4%の公認会計士 國村 年のブログ

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日本経済新聞によると、万年割安株の代表だった大日本印刷(DNP)が汚名返上に動き出したようです。

自己資本利益率(ROE)を引き下げていた要因の政策保有株(持ち合い株)の大幅な圧縮や自社株買いを盛り込んだ中期経営計画を2023年3月に示しました。

0.6〜0.7倍台だったPBR(株価純資産倍率)は公表後に基準となる1倍を一時超えましたが、足元では再びPBRの1倍割れが続いています。

削減を打ち出した政策保有株などの投資有価証券に、一段の圧縮余地が残っているようです。

 

「環境・社会・経済がグローバルな規模で急激に変化しており、自ら新しい価値を提供しないといけなくなった。そのためには非連続ともいえる変革が大切だ」とDNPの北島義斉社長は、先日、投資家向けに開催した新中計説明会で語りました。

DNPは創業140年を超える名門企業で安定した収益を稼いでいましたが、ROEやPBRが低迷し、株主との関係では「変わらない日本企業」の象徴でもありました。

 

新中計では2026年3月期までにROE8%超えの達成や計3,000億円の自社株買いなどを盛り込みました。

大日本印刷は2022年3月期のROEは9%を超えましたが、過去10年の中央値は3%を下回っています。

資産効率を引き下げているのは手元資金や投資有価証券です。

2022年3月末時点で、手元資金は2,800億円、投資有価証券は4,100億円あります。

 

こうした資産がどれだけの利益を生み出しているのでしょうか?

本業の事業資産がどれだけの利益を生み出しているかを示す「事業資産利益率」と、金融資産が安定収益を生み出しているかを示す「金融資産利益率」の2つを試算しました。

 

過去10年にわたって試算すると、一貫して事業資産利益率が金融資産利益率を上回ってます。

事業資産利益率は4〜11%で推移していますが、金融資産利益率は1%以下が続いています。

低い金融資産利益率が、総資産がどれだけの安定収益を生み出しているかを示す総資産利益率(ROA)を引き下げているのです。

 

投資有価証券のうち、政策保有株は129銘柄、貸借対照表計上額で3,350億円に上り、純資産(約1.15兆円)の3割に達しています。

リクルートホールディングス株や第一生命ホールディングス株などの政策保有株がほぼ利益を生まない構図となっています。

 

新中計では2028年3月期までに政策保有株を純資産の10%未満に減らす目標を掲げ、売却で2,200億円の資金を調達します。

自社株買いで中期的に自己資本を1兆円に減らすことで、自己資本利益率(ROE)を10%に引き上げるそうです。

 

中計通り2026年3月期までに営業利益850億円を稼げるなら、現行の資産売却計画でも8%のROE目標は達成できそうですが、一部証券アナリストは営業利益が会社計画を下回ると予想しているようです。

利益が減れば目標達成へのハードルは上がります。

東証などの分析でもPBR1倍を超える水準となるROEは8%が多く、PBR1倍超えにはROE8%を達成することが避けて通れません。

 

ROEを引きあげる一つの手法は利益率の引き上げです。

DNPの4事業のうち、稼ぎ頭はエレクトロニクス事業です。

スマートフォンなど有機ELディスプレーの製造に使う「メタルマスク」や半導体製造部材のフォトマスクを手掛けています。

営業利益は過去5年間で4割増え、2022年3月期の連結営業利益のうち7割を占めるまでに成長しました。

営業利益率は20%前後で推移しています。

 

一方、他の事業の営業利益率は低水準です。

紙印刷やデジタルトランスフォーメーション(DX)の情報コミュニケーション事業、包装材が主力の生活・産業事業、飲料事業のいずれも過去5年間で5%を割っています。

ただし、情報コミュニケーションや飲料など利益率の低い事業については「手放せば資産効率は高まるが、DNPにその姿勢は見えない」(岩井コスモ証券の斎藤和嘉氏)との指摘もあります。

事業構造改革に踏み込まずに利益目標を達成する計画には不透明感があるようです。

 

もう一つの達成のカギは一段の資産圧縮です。

政策保有株を純資産の10%未満とする現在の目標では、削減規模は年平均で400億円程度に過ぎず、同じく政策保有株が多い凸版印刷の削減ペース(2022年3月期に約1,000億円)に見劣りします。

また、仮に現行目標を達成しても、DNPにはなお1,000億円規模の利益を生まない資産が残る可能性があります。

 

政策保有株の全廃に踏み切る企業も珍しくない中で、中途半端な改革は市場の疑念を招きかねません。

PBR1倍の壁を突破するためにアクセルをもう一段踏み込む姿勢が問われています。

 

PBR1倍の壁の突破に向けて企業が動き出すと、株価が上がると思われる一方、政策保有で持たれていると、その売却により、株価を押し下げる可能性がありますね。

DNPのようなザ昭和という感じの企業が、これを機に変わってくれればいいなぁと思います。

貸借対照表は時価主義で作成委しているわけではないため、貸借対照表が解散価値を表すわけではありませんが、日本企業はPBR1倍割れが多いので、悲しくなりますね。

バフェットさんが日本株を買い増すというのも、PBRから考えて日本株は割安と判断されているのかもしれませんね。

 

大日本印刷が「万年割安」の汚名返上に動き出すもなお足りぬ資産売却について、どう思われましたか?