読売新聞によると、「ちょっとだけ。すぐに返せばいい」と、ほんの出来心で始まった着服は、5年間で5,000万円超に膨らんだようです。
滋賀県湖南市の自動車教習所で入所生の授業料を横領したとして業務上横領罪に問われた経理担当の女性(54)に対し、大津地裁は2023年3月、懲役2年6月(求刑・懲役4年6月)の実刑判決を言い渡しました。
公判では、単純かつ大胆な手口や、罪と知りながらもやめられない心理が浮かび上がりました。
判決によると、女性は滋賀県湖南市の自動車教習所で経理を担当していました。
2016年4月~2021年6月頃、入所生249人から受領した授業料など現金計約5,360万円を着服しました。
2000年1月に就職し、同僚と2人で経理に従事しました。
入所生から受け取った金を女性の卓上の手提げ金庫で一時保管し、まとまった金額が金庫にたまると専用の口座に振り込んでいました。
受領した入所生の名前や金額は、「収入金日報」に記載して管理していました。
歯車が狂い始めたのは2010年春頃です。
娘の大学進学などが重なり、金に窮していました。
家計のやりくりは全て女性が担っており、誰にも相談できなかったようです。
切羽詰まって目の前の札束に手が伸びたのです。
その手口は、受け取った授業料の一部を収入金日報に記載せず、自身のかばんに入れて持ち帰るという単純なものです。
金庫の管理は2人で月ごとに交代で担っていましたが、同僚が不正に気づくことはありませんでした。
教習所で会計監査などが行われていなかったことも女性の犯行に拍車を掛けました。
「(横領を)やめるには職場から離れるしかない」と、女性は罪悪感から、2016年4月頃、理由を伏せて夫に「退職したい」と相談しました。
しかしながら、何も知らない夫からは「生活が苦しいから、続けてほしい」と言われ、悪行を断つ機会を失いました。
やましさを感じつつも、その後も着服を重ねました。
くすねたお金は、生活費や自宅のローン返済にとどまらず、家族旅行、化粧品や衣服、家電などにも浪費しました。
弁護側は「家族にひもじい思いをさせたくなかった」などと動機の一端を明かしました。
女性は「どんどん(額が)大きくなって、止められなかった」と犯行を重ねた理由を説明しました。
「(家族に)いい思いをさせたかった」とも述べました。
発覚のきっかけは新型コロナウイルスの感染拡大です。
国のコロナ対策の助成金を申請しようと教習所を運営する組合が収入調査を行うと、女性がこれを自身の横領の調査と勘違いし、「これ以上隠せない」と不正を名乗り出ました。
判決で、大森直子裁判官は「被害額が大きく、5年余りで200回以上繰り返した常習的犯行で、悪質」と指摘しました。
「本来の収入をはるかに超えて、身の丈に合わない生活を続けた」と非難しました。
教習所の監査体制の甘さに言及する一方で、「信頼につけ込んだ犯行で、規範意識の乏しさによって起きた」と述べました。
横領総額のうち、これまでに親族らがかき集めて約1,000万円を弁済しました。
今後、夫の退職金などで1,300万円を支払うと約束しました。
組合とは、女性の自宅を担保にすることを条件に、約3,000万円を債権放棄する条件で和解したそうです。
大森裁判官は判決を言い渡した後、「自分のしたことの責任は果たしてもらわないといけない」と諭しました。
傍聴席で家族が見守る中、女性はすすり泣き、何度も深くうなずいていました。
経理が2人いて気付かないわけですから、管理体制はずさんだったんでしょうね。
このような着服を行えるような状態にしておいた経営陣にも、内部統制を構築するという意識はなかったんでしょうね。
記事によると、運営は組合とありますので、役員も兼務なのではないかと思います。
少子化などで、自動車教習所も経営が楽ではないと思いますが、これだけ着服されて気付かないのもどうかと思いますね。
ご家族もある程度の収入は想像できるでしょうから、おかしいと思わなかったのだろうかかと思う一方、着服したお金で裕福な生活を今までしていたことをどう思うのでしょうか
?
本当に、色々な人や組織が不幸になりますので、経営者の方々には、内部統制の重要性を理解していただいて、きちんと構築してほしいですね。
経理の女性が家族のため「ちょっとだけ」札束をつかみ罪悪感を抱きつつ5千万円超を着服したことについて、どう思われましたか?