中小企業の融資保証を金融庁が11年ぶりに改正し起業を支援! | 体脂肪率4.4%の公認会計士 國村 年のブログ

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日本経済新聞によると、中小企業向け融資で経営者が個人で背負う「経営者保証」の慣行が見直されます。

金融庁が先日発表した監督指針改正案は金融機関に対し、経営者個人に信用保証を負ってもらう場合は具体的な理由を説明するよう義務付ける内容で、事実上、制限を加える規制です。

国が融資慣行にメスを入れるのは、スタートアップ企業が増えない危機感があるようです。

 

経営者保証の慣行は高度成長期に確立されました。

間接金融主体の日本は銀行がリスクをとり、起業や事業拡大する際の融資手段として定着しました。

 

金融庁が信用保証を規制するのは11年ぶりです。

2011年には監督指針を改正し、経営者以外の第三者に債務履行を求める「第三者保証」を原則禁止しました。

 

金融庁の監督指針改正案は、経営者個人が負う「経営者保証」を2023年4月から事実上制限する規制です。

2021年度の中小向け新規融資に占める経営者保証の割合は、民間金融機関全体で約7割に上ります。

 

改正案は金融機関に対し説明義務を課す内容となっています。

金融機関は理由を説明したことを記録し金融庁に報告しなければならず、経営者保証を求める手続きは煩雑になります。

金融庁はディスクロージャー誌などで取り組み方針を公表するよう要請します。

 

私財を隠していないか、経営の健全性を確保する意志があるか、不都合な情報を隠したりしないか?

経営者保証をつける場合、経営者保証を外す要件の「法人・個人の区分・分離」「財務基盤の強化」「適時適切な情報開示」の観点で、「どの部分が十分でないために保証契約が必要になるか」「どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか」の具体的な説明を金融機関に求めます。

 

監督指針は行政処分につながる手続きを記載するルールブックです。

必要があればヒアリングや検査を実施し、手続きに違反があったり企業とトラブルが起きたりすれば行政処分の対象にします。

第三者保証を原則禁止したときと同じ規制の仕組みで、今回も経営者保証が姿を消す可能性があります。

 

これまで金融機関は債権保全重視の観点から、従来の慣行のまま保証を付けている例もあります。

金融庁の調査では、金融機関の7割超が新規融資で保証を取る場合に「常にガイドラインについて説明を行う方針」としています。

ただし、実際に金融機関から「ガイドラインの説明を受けた」と答えた事業者は3割程度にとどまっています。

自主的な取り組みを要請してきましたが、金融機関の姿勢に差があるなど現状を踏まえて規制に切り替えることにしたようです。

 

中小企業庁も、先日、中小企業政策審議会・金融小委員会を開き、経営者保証を解除できる新制度を導入する議論を本格的に始めました。

中小企業が信用保証協会に支払う保証料を上乗せすれば経営者保証を不要にできる仕組みで、財務書類を金融機関に提出したり、代表者が当該企業から貸し付けを受けていないことなどが条件となる方向です。

 

経営者保証は海外でも珍しくありません。

米連邦準備理事会(FRB)の2020年の報告書によると、アメリカも約6割に上りますが日本より少ないです。

日本の場合、財務内容が良好だったり、逆に弁済能力が不足していたり、「合理的な理由がなく不必要に経営者保証を付けている例が多い」(金融庁)ようです。

 

中小企業庁の小規模企業白書によると、日本の開業率(2020年)は5.1%で、フランスの12.1%、イギリスの11.9%、アメリカの9.2%と比べて低くなっています。

政府は、2022年6月に閣議決定した「新しい資本主義」実行計画で、成長のエンジンとなるスタートアップ支援を柱に創業資金を借りやすい制度をつくる方針を掲げていました。

 

新規先や挑戦する事業者に対して銀行側がリスクを取る姿勢に転換することが必須となります。

東洋大学の野崎浩成教授は「財務も大事だが、アイデアを評価して融資するなどこれまで以上に経営者を深く見ていくことが重要」と話しています。

 

融資の信用保証を巡っては、かつて限度額や保証期間の定めもない「包括根保証」もありました。

しかしながら、生活破綻や自殺の要因と社会的に批判も出ました。

2005年に民法を改正し、今では禁止されています。

 

事業承継の足かせの一つが、後継者の担保や経営者保証だと言われていますし、そもそも杓子定規に取る必要はあるのだろうかと疑問に思っていたので、制限が入ることは良いことだと思います。

ただし、金融機関にその企業等のビジネスの将来性を見る能力があるのか疑問はありますし、結局、保証料や金利が上がれば、融資を受けにくくなるのではないかと思います。

経営者側が、きちんとビジネスの説明ができ、将来の事業計画を作成できるようにならないといけなくなるのかもしれませんが。

 

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