2019年度から農協の義務となる公認会計士による監査の費用を、税金で負担するかどうかが論争になっているようです。
全国農業協同組合中央会(JA全中)が「配慮」との表現で、国からの補助を求めているためです。
企業であれば監査の費用は経営に必要なコストですが、JAは政治を頼って負担を逃れようとしているようです。
先日、東京・平河町の砂防会館別館に約850人の農協関係者と、与党議員が集まったようです。
話題になったのが、公認会計士の監査にかかる農協の負担です。
与党からは「監査コストはJAの死活問題」(公明党の佐藤英道農林水産部会長)などと農協への配慮を示す声が相次いだようです。
現在は、農協に対する監査をJA全中や、都道府県ごとの組織である中央会が担っています。
200億円以上の貯金を預かる農協などが対象で、農協全体の約8割が監査を受けています。
改正農協法で、この監査業務は2019年度から公認会計士に移ることになります。
改革の源流は20年以上前にあります。
住宅金融専門会社(住専)問題で農協に多額の不良債権が発生したことを受け、農政審議会(首相の諮問機関)が1996年に外部監査の導入を提言し、日本公認会計士協会も2008年に農協への外部監査の導入を求めていました。
外部監査の導入が浮上してから約20年経ちますが、2016年の農業総産出額は9.2兆円と1996年から11%減り、多くの農協は農産品販売の赤字を金融の収益で補っています。
結果として、貯金量が1兆円超と地方銀行並みになった農協もあります。
金融のリスク評価は難しく、農林水産省幹部は「身内ではなく、公認会計士による外部監査が必要だ」と話しているようです。
いわば経営に必要なコストが問題になるのは、2016年施行の改正農協法で導入時の負担に政府による「配慮規定」があるためです。
ある与党議員は「これまでより多くの監査費用がかかるなら、国が面倒を見るべきだ」と主張しています。
「配慮」との名目で国から予算を出すことになれば、政治に頼る農協の体質が変わっていないことになります。
政府が進める農協改革は、農協に自立を求めています。
農協経営の透明化は、「改革の象徴のひとつ」(農水省幹部)で、これすら安易に国に頼るなら、農協の自立は遠のくばかりですね。
現状は、農業ではなく、農家ではない準組合員に関する金融事業で稼いでいるのが実態だと思います。
また、最近は減ったと思いますが、不祥事がたくさん起こっているのも事実です。
税理士の仕事をしていると、あまり手続きなどが厳しくないのでありがたいと思うこともあるのですが、一方で、表には出てこないような問題が生じていることも多々あるでしょう。
監査コストは、農協の利用者が安心して取引を行うために必要なコストだと思います。
内部統制が今よりは整備・運用されると推測されますので、信頼につながり、結果的に恩恵を被るのは農協でしょう。
そのコストを国に求めるというのは、最近、会計監査が必要になった社会福祉法人や医療法人などとのバランスを欠くと思いますので、国民はどう思うんでしょうね?
農協の外部監査費用を国に負担させようとしていることについて、どう思われましたか?