母の特養で知り会ったCさんの続きです。
過去記事
あれはいつだっただろう。
夕方前だったろうか。
母の面会に行った時、
ダイニングに介護士の姿は一人も見当たらず、
他の利用者の方もおらず、
私と母とCさんとで話が出来る時がありました。
(と言っても、私の母は会話に入ってこれませんが)
会話が響く館内だけれど、
職員がいなかった事で、Cさんは私にこう言われた。
「私はもう何年もここで過ごしている。
誰がどんな人かも、みんなわかってる。
大勢介護士さんはいるけれど、
あの若いお兄ちゃん介護士は優しいけれどね…。
そういう人もいれば、そうでない人も。」
そう言って、言葉を濁された。
そして
「ここがどんなところで
働いてる人が一人一人どんな人か、
もう嫌というほど知ってるわ。
私に聞いてくれれば、
なんだって教えてあげる。」
そう言われた。
いつもは楽しい話をされるCさんが
いつもと違う話題を
ふってこられた事に驚いたけれど、
自分はCさんを見ていて、
痛々しいほどに介護士に気を遣い、
嫌われまいと必死で、
「ありがとうございます。」と
敬語で連呼する姿を見ていたので、
気を遣いすぎる何かがあるのだと
ずっと思っていたのです。
そこで、
「ここはどうですか?
過ごしやすいですか?
いい施設ですか?」
と質問してみた。
「というのも、
ここは、なんだかとっかえひっかえ
人(介護士)が変わっていて、
どうなのかな~と思う事もあるんです。」
と付け加えた。
実際、そう思っていたのは事実だから。
するとCさんの顔がゆがんだ。
「私も色々味わってるから…。」と。
そして考えるように少し間をおいてから、
意を決したように、話してくれた。
「この特養のダイニング入り口から
フロントまで長い廊下があるでしょ?」
「ありますね。」と私。
<リビングの入り口からフロントまでの長い廊下は
こんな感じの廊下。特養の出口からフロントまで
30mくらいの幅広く長い廊下があり、
利用者は自由に往来できる。>
あの日は昼間の時間帯だったんだけど、
ダイニングには誰も介護士がいないし、
車椅子を押して連れてってなんて
お願いできないから、
館内のコンビニまで
自分で行ってみようと、
車輪を手で回して進んでみたの。
そしたら急にめまいがして、
手に力も入らず、
そこで動けなくなってしまった事があったの。
うずくまるようにして、
とにかく誰か来て~、
助けて~と心で叫んでいるのだけれど
声が出ないの。
なのに素通りしていく介護士の人もいて、
やっと気づいてもらうまで
どのくらい、かかったと思う?
私、2時間もそこでじっとしてるしかなかったの。」と。
「え、2時間?!」
「声もかけてもらえなかったのは
好きで廊下にいてるとでも思ってたみたい。」
「いや、いくらなんでも…。
動いてないCさんの姿を見たら、
声掛けくらいしますよね。
ありえないと思いますよ。」
目を丸くして驚く私に、Cさんは
「それだけじゃない。
私、同じ目に何度もあってるの。」と。
「どういう事ですか?」
またまた驚く私に、Cさんは続けた。
「毎日、夜の食事のあと、
順番に介護士の人が利用者を部屋に連れていくでしょ?
私はこの通り、下半身がマヒしていて
まったく自分で動かせないの。
だから女性の介護士の人でも
力のない人だと、
私を抱き上げられないのね。
それで、私を自分の個室のドア前まで
車椅子で移動させたあと、
女性の介護士は、
男性介護士に委ねるわけ。
でも男性介護士が、待てども待てども
来ないの。
で、貴女もおわかりだと思うけど、
ここは廊下が薄暗いでしょ?
そして私の部屋は
なぜかいつも一番奥にさせられてる。
だから奥にいる私が
薄暗い廊下で待たされてる事を
ずっと気づいてもらえないでいて、
1時間くらい待たせられる事は
何度もあったし、
ある時は2時間待たされた事もあった。
寒い廊下で。
それが一度や二度じゃないの。」
当然私はこの話に絶句した。
「なんて残酷なことを…。
それは放置ですよ、放置!
引継ぎをせずに女性介護士は
夜勤の介護士にまかせたつもりで
そのまま帰宅しちゃったって事なんですか?」
「わからない。」
「それに、そもそも、なんで、
気づきにくい個室の前まで移動させて
そこで待たすんですか?
部屋の前で待たせる意味、あります?
Cさんのお部屋、一番奥じゃないですか!
あんな暗いダウンライトが、
1個あるかないかの暗い場所にですよ?
食事をしてた明るいダイニングの
テーブルで、そのまま待機してもらってたら
そこでテレビを見て時間もつぶせますし、
待ってる事に気づいてもらえないって事は
まずないと思うんです。
仮に個室の中で待たされてたとしたら
部屋にはナースコールがあって
そこから呼び出し出来るけど、
廊下にはないですよね。
呼ぶに呼べない状態にされてるって事ですよね。」
「そうなの。
なぜか部屋には入れずに、
ドアの前の廊下で待たされるの。
そもそも私は自力で車椅子を動かせないのに、
部屋はリビングから一番遠い部屋にされてる。
どうしてそんな奥の部屋にするのかなと思う事があるの。
ピンピン歩いている利用者、
いっぱいいるでしょ?
そんな人こそ奥の部屋にすればいいのにと思うわ。
私は自力で部屋のドアさえ開けられない。
自力でベッドに車椅子で移れたら
どんなにいいだろうと思うけど、
それが出来ないから、
待たされた場所で待ってる事しか出来ない。
もし一番先に、
私が就寝介護してくれる順番だったら
こんな事は起こらないのだけれど、
私はなぜか一番最後にされてる。
そして待たされながら、
今日は早く来てくれるかしら、
あぁ、いつになったら来るのかしら、
朝まで気づかれなかったらどうしようと、
何とも言えない気持ちにさせられるのよ。」
それを聞いて、
私はCさんへの同情とともに、
この施設への怒りのような感情が
沸々と湧き上がってきたものです。
そして何とかしなくてはと思った私は、
Cさんに、自宅にあるベルがある事を思い出し、
提案してみました。
ベルは画像のように
こんな感じのベルでした。
母のために買っていた
アンティーク調の真鍮のベルで
気に入ってたけど
もう母が使う事はないと思っていた物。
Cさんのお役に立つのであれば、
喜んで差し上げるとお伝えした。
サイズは小さなサイズでも、
鳴らせばすごい音がする。
これを鳴らせば気づかない人はいないはず。
大きな声の出せないCさんが
同じ状況にさせられた時、
介護士に気づいてもらうための
SOS対策として使って頂くには
最適だと思った。
サイズも小さいから
車椅子のポッケの中にも入れておける。
これを提案すると、
Cさんはとても喜ばれて、
「頂けるの?それはありがたいわ。」
と微笑まれた。
そしてその次に母の面会日、
夕食が終わる頃を見計らって
Cさんにベルを差し上げたのです。
話は長くなりますので、
続きは次の記事で。
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今日も私のつたない長い記事に
お付き合い頂きましてありがとうございます。
風邪やインフル、コロナが蔓延しています。
充分の予防対策をして、お過ごしくださいませ。