元帥夫人のアリアより
わかってほしいの カンカン
私つくづく
時のむごさが身にしみるの
心のなかにまで忍び込んでくる時は
捕まえられない
指のすきまからこぼれ
溶けては消え
霧や夢のように去っていくわ
違うわカンカン わかってちょうだい
そのうち時がくれば
あなたは私から去っていくわ
時が流れても
物事の本質は変わらないわ
時とは不思議なものよ
ふだんは少しも気にならなくても
気づいたらその事しか考えられなくなるの
時は私達の周りにも心の中にもあるわ
顔の中にも足跡を残し
鏡や私のこめかみの中にも忍び込み
そして砂時計のように音もなく
私とあなたの間にも時は流れている
ああ カンカン
気づくと私には時の流れが
聞こえるの
真夜中にふと目をさまして
時計を全部止めてしまうこともあるわ
でも時を恐れなくてもいいのよ
時もまた 私達を創造なさった
神様がお造りになったのだから
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元帥夫人 キリ・テ・カナワ
オクタビアン アン・ハウエルズ
オックス男爵 オーゲ・ハウグランド
ゾフィー バーバラ・ボニー
1985年2月14日
コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団・合唱団
指揮 : ゲオルク・ショルティ
演出 : ジョン・シュレジンガー