1994年、新宿文化センターにて、600回記念公演として上演された。
つう ・・・鮫島有美子
与ひよう・・小林一男
運ず ・・久岡昇
惣ど ・・・中村邦男
子供達・・・鹿児島市立少年合唱隊
東京シティフィル管弦楽団
指揮棒は、作曲家・團伊玖磨が、自ら振るった。
2年前に受けた、SM子教授の声楽の授業。
今でも忘れられない。
現代音楽のフルクサス系授業一色のなか、この授業だけが、唯一、人間の暖かさを感じる音楽に出会わせてくれた授業だった。
この授業を通じ、私はたくさんの日本歌曲に出会い、日本語の美しさ、深さに触れることが出来た。
現代音楽家がこぞって取り上げ、表面だけをなぞった「ニホンテキサクヒンヤッテマス」の軽さとは異なる、どっしりした「日本歌曲」に出会えた。
S先生は授業のなかで、
「團伊玖磨のオペラ“夕鶴”は、素晴らしいオペラです。」と言われた。
「まだ観てない人は、いつか観てください。」そうおっしゃった。
その言葉が忘れられなくて、ずっと機会を待っていた。
igaさんからお借りしたオペラDVD。
團伊玖磨、27歳の時に木下順ニの世界をオペラに仕上げて以来、この作品は、国内、海外で6上演され続け、この作品の歩みとともに、自身も成長してきたと、氏は語っていた。
「鶴の恩返し」の物語に、さらに人間の欲望などを描いた物語。
ところどころに登場する、子供達が歌うわらべ歌。
日本語の発音やイントネーションを吟味した歌。
こんな物語は、決して他の国では生まれないだろうと思う。
最後のアンコールが終わっても、感動がいつまでも余韻となって残ってる。
子供達の合唱以外で、登場人物はたったの4人。
なのに、壮大なスケールを感じるのは、何より管弦楽の卓越した音楽、心に届けられる音楽だからだと思う。
プッチーニは、アリアで泣かせるけれど、この作品は、管弦楽が登場人物の心理描写を何度も蘇らせる。その余韻に、感情がこみ上げ、涙を誘う。
S先生、ようやく「夕鶴」に出会いました。
すばらしいオペラ。すばらしい日本の物語。