トスカは、教会のカンタータを歌う歌手。
マリオは、教会の壁画を描く画家。
愛し合う二人に襲った悲劇の発端は、マリオが、友人の政治犯の逃亡をかくまったことから始まった。
やがて、政治犯をかくまった事がばれ、捕らえられ、拷問を受けるマリオ。
苦しみにもがくマリオのうめきに耐え切れず、あれほどマリオから口止めされていた政治犯の居所を教えてしまうトスカ。
美しく妖艶で、激しい気性のトスカを、ジリジリと攻めあげることに喜びを感じる軍曹のスカラピア。
「マリオを助けたいのなら、私のものになれ。
そうすればマリオの命を助けよう。さあどうする!」
追い込まれるトスカ。
その精神的葛藤を歌うトスカのアリアは、この上なく激しく、この上なく差し迫るものがあった。
愛するマリオを救うために、一度はこの男に身をあずけることを覚悟したトスカ。けれど、テーブルのナイフを見たトスカは、思わずそれを握りしめ、スカラピアの胸に突き刺した。
神に反する言葉や行為の数々とは対照的に、舞台は教会から始まるという、なんとも言えない相反する設定が、とてもおもしろい。
そして劇的な激しい物語に、何度も登場する鐘の音。
プッチーニのオペラは、毎度毎度が悲劇だと言われているけれど、
私には、悲しい結末を迎えた登場人物は、いつも神の国を見つめて祈りを捧げている気がする。それをプッチーニは、音楽で描いているように思う。
プッチーニの音楽には、いつも神の国、「天国」が見え隠れする。
描いているというよりも、現れてしまっているって言うべきか。
敬虔な、それもすさまじく敬虔なカトリックの信条が、どこかに暗号のように組み込まれているのかもしれない。
当時の作曲家達に否定されていたプッチーニ。
多くの作曲家が否定した理由は
「わかりやすすぎる」=「新しくない」
それでも、その旋律の強さと、そして彼の音楽のなかの「天国性」,「正義性」とでも言うべき、美しく壮大で広がりのある世界は、今も多くの聴衆を魅了する。
※画像は、igaさんが魅了されたトスカの赤いマントの場面。