すばらしい傑作のオペラ映画「トスカ」を鑑賞しながら、
私はふと先日観た「夕鶴」を思い出した。
トスカは、愛する男性のために、人まで殺す。
いや、愛する男性のためにというよりかは、
わが身のために人を殺した。
一方、おつうは、愛する男性のために、
自分の命を投げ出してまで、布を織った。
一反は、お金が大好きな与ひょうが都へ上るために。
もう一反は、自分がいなくなったときの形見として。
コージャスな「トスカ」の舞台と、
ただ、雪がしんしんと降っているだけの「夕鶴」の質素な舞台。
「トスカ」のオペラを観ながら、私は「夕鶴」のなかのおつうを思い出し、なぜか泣けてきた。
日本の奥ゆかしい女性像を描いた「夕鶴」の世界。
西欧の人達は、どう観ているのだろうと、ふと思った。