午後になって、ワーグナーの「トリスタントとイゾルデ」を観た。
実をいうと、igaさまからお借りしたDVDのなかで、最も観たいのが、このオペラだった。
なんせ、この作品は、後の現代音楽の方向性を示した作品と言われ、用いた和声進行などはチョー有名。どの音楽辞典にも出てくる。
だから、観たくて観たくてしょうがなかった。
で、なんで後回しにしたのかというと、美味しい握り寿司のなかで、一番食べたいものを、後にとっておくちゅうのと同じ。
今日の午前に観たち駄作オペラ「さまよえるオランダ人」とは異なり、格段に統一感があるので驚いた。
前奏曲 → 第一幕 → 前奏曲 → 第二幕 → 前奏曲 → 第三幕とあり、時間も4時間近くになる。
第一幕の前奏曲が長く、「もう始まってもええんちゃう?」とi
ながら、ようやく始まった第一幕。
いや~~、いきなりヒステリックな始まりですな。
「さまよえるオランダ人」に懲りた私は、嫌な予感がしたけれど、観ているうちに、どんどんよくなって、第二幕、特に第三幕には魅了された。
音楽が、この上なく美しい。
このオペラの解説では、ワーグナーは、当初、従来の作品とは異なり、ロマンチックな作品でも作ろうと思ったところ、制作しながら、内面を掘り起こし、それを外的手段で「魂の模索」を音楽として描いていったのだという。
かなり哲学的要素もあるように思えた。
この作品は、天国を感じさせるプッチーニの世界とは対極のように、光が照らされることのない重く、薄暗い世界。
ちょうど、台風の前に、夜空一面に覆う灰色の雲というか・・・。
そこには圧倒される威圧感もあり、しかし、漂う雲間のあの、なんともいえない灰色の独特の美しさがあるっていうか・・。
私はこの作品を観ながら、なぜかシェーンベルクの「浄夜」を思い出してしまった。
あの「浄夜」を、生演奏で聴いた日は、本当に衝撃だった。
これほど美しいものかと驚きだった。
「さまよえるオランダ人」の初期作品から、ワーグナーの楽劇はどんどんと発展し、「トリスタントとイゾルテ」という作品を生み出し、ワグネリアンを増やしていったんだね。
トリスタン … ハイッキ・シウコラ
イゾルデ … エバ・マリア・ブントシュー
国王マルケ … ジークフリート・フォーゲル
ブランゲーネ… ローズマリー・ラング
指揮:ハインツ・フリッケ
管弦楽:ベルリン国立劇場管弦楽団・合唱団
演出:エアハルト・フィッシャー
1990年11月1日 NHKホール