台風18号の被害により佐川急便が一部出荷受付の中止へ | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 本日、佐川急便から「台風18号の影響によるお荷物の一部出荷受付中止について」というメールが届きました。メール本文は以下です。

 10月6日に発生いたしました静岡県下におけるJR線路への土砂流入により、九州方面向けに使用しているJRコンテナが利用できない状況となっております。これを受け、緊急措置としてトラック輸送に切り替えておりましたが、一部遅延が発生しております。
 現状、復旧の目途が立たないことを受けて誠に申し訳ありませんが、九州方面への出荷につきまして、一部エリアからの受付を中止しております。再開時期につきましては状況が改善され次第追ってお知らせいたします。

受付中止エリア
神奈川県、千葉県、埼玉県、群馬県、茨城県、栃木県、山梨県

2014年10月7日 10:00現在


 東京発の荷物は止めるわけにはいかないが、関東の他県の荷物は受け付けられないということなのでしょう。佐川急便なりに様々な苦しさを感じつつ出した結論なのだろうと思います。私が千葉に住んでいるからといって、佐川急便を非難するつもりは毛頭ありません。

 ただ、我々が考えなければならないのは、効率性が高い流通網が必ずしもよいものとはいえないという現実です。トラックも鉄道も道路もフル稼働している状態が最も効率的な状態ですが、そんな状態でその一部が何らかの機会で寸断されると必要な流通が大きな制約を受けざるをえなくなるということを、今回のメールは本当によく教えてくれていると思います。

 東海地震は「来るぞ!来るぞ!」と言われてから結局全然来ないまま40年以上経ってしまいました。この先いつ来るかももちろんわからないですが、もし今突然やってきて、東海道線、東海道新幹線、東名高速道路、国道1号線など、名古屋以西と首都圏とを結ぶ太平洋岸を走る幹線経路がすべて切断される事態が発生した場合に、物流は一体どうなるのでしょうか。鉄道では、東京ー長野ー名古屋を結ぶ中央線もあるはずですが、これが十分な鉄道迂回路として利用できないからこそ、佐川急便は東京以外の関東県からの荷物の受付を停止させたのでしょう。高速道として中央高速もありますが、東名高速や国道一号線の輸送を引き受けられるほどのキャパシティは間違いなくありません。食料の輸送が細ってしまった場合には、首都圏では深刻な食料不足と直面せざるを得なくなる可能性もあるわけです。東日本大震災の時にも経験したように、原材料の輸送が寸断されることによって、工業にも大きなブレーキが押し寄せるのは必然でしょう。

 危機管理というと軍事的なものをすぐに頭に浮かべてしまうかもしれませんが、無言のまま日常を支えているものが失われた事態が生じた場合に備えるというのがその意味するところであり、軍事的なものを含みつつ、それよりも遥かに広い概念です。しかしながら戦後の軍事アレルギーの中で危機管理という意識が完全に希薄化し、日常生活においての効率性ばかりを優先してしまったことが、非常に脆弱な今のような状況を作り出したとは言えないでしょうか。

 この観点からすれば、効率性や採算性をある程度犠牲にしても、道路網や鉄道網、さらには航空網さえ整備していくことが必要なのではないかと思います。


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