林芙美子『浮雲』 | スコットランドの毎日。

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いい歳になってから読もうと

長年待機していた作品のあれやこれやを

今年は読んでいます。

 

 

まずは、渡辺淳一先生の大ベストセラー、

『失楽園』を読みました。

 

感想文はこちら

 

 

もう1つ、

長年待っていたのが、

林芙美子『浮雲』。

 

 

第二次大戦下、義弟との不倫な関係を逃れ仏印に渡ったゆき子は、農林研究所員富岡と出会う。一見冷酷な富岡は女を引きつける男だった。本国の戦況をよそに豊かな南国で共有した時間は、二人にとって生涯忘れえぬ蜜の味であった。そして終戦。焦土と化した東京の非情な現実に弄ばれ、ボロ布のように疲れ果てた男と女は、ついに雨の屋久島に行き着く。放浪の作家林芙美子の代表作。

 

 

 

 

感想。

もう、それはそれは面白かったです。

 

 

男女の、理屈では割り切れない何かが存分に描かれており、

共感するのとは違った、

しかしながら、恋愛とはこういうことだという

リアリティを強く強く、感じることができました。

 

 

 

 

富岡のような男、いますよね。

 

自分第一で、

自分のためなら、全てを切り捨てる男。

 

女にだらしがないわけではない。


でも、ちょっかいを出すんですよね。

たいして好きでもないのに。


それで、女の方がハマっちゃうの。

 

 

 

リアルライフでも

男友だちにこういう人が何人かいます(いました)が

バツ1だったり、バツ2だったり、婚約破棄だったり。

 

そして、皆さん、

よくも悪くも、人たらし(魅力的)!

 

 

 

 

 

 

ヒロインのゆきこは、

レビューや、他の読書感想などには

野生的だとかたくましいなどの形容がありますが

私には、富岡のような

人たらしの男に熱を上げてしまった女。

ただそれだけ。

 

 

ティーンの頃は

「あいつはやめとけ!」

と女ともだち全員で止めに走ったものだけど(笑)

大人になると

「まーでも本人がそれを幸せと思うなら」

とほっとく。

笑い泣き

そういう、場所・時代関係なしの

よくある恋愛パターンみたいな?

 

 

 

この関係を似た感じで描いているのが

SATCのキャリーとビッグだと思うんですが、どうでしょう?

 

最初から最後まで、

キャリーがビッグを追いかけていただけで

ビッグの方は、自分以上に愛する人などいなかった。

(と思う)

 

 

 

 

 

もう1つ気づいたんですが、

名曲「越冬つばめ」や「天城越え」の設定も

近いものがあると思います。




 

絶世の美女が、美しい声で歌い上げるから

感動して、応援したくなるのであるのだなと。

悲恋なのだなと。

 

 

ゆき子は、見目美しい部類の女子ではないのですよ。

しかも敗戦の日本で、情景も汚い感じ。

美しいもの、美味しそうなものが全く出てこない。

 

目を覚ませ。

富岡はやめとけと言いたくなる。

 

しかしながら、

ゆき子は「越冬つばめ」。

 

 

見目、情景の美しさって大事。

ニヒヒ

 

 

 

さて、なぜに、ゆき子は(キャリーは)

人生かけてまで

富岡(ビッグ)タイプを追いかけずにいられないか?

 

思いますに、

富岡(ビッグ)タイプは、女性に

「自分はいい女」と思わせてくれるマジックがある。

 

これです。(多分)

 

 

 

 

最後、

堕胎後の体調がすぐれぬまま

富岡の屋久島行きについて行ったゆき子は

そこで死んでしまいます。

 

無理矢理ついて行ったわけでしょう。

本望であったはずです。

 

一方、富岡。

ゆき子が盗んできた大金を手にし、

1週間くらいはしょぼくれるでしょうが、

また身近な女に手を出す感じ。

 

 

映画だと最後が違うようですね。

見ていないんですが、

ゆき子を失って初めて

彼女への愛情を富岡が自覚した、、、みたいな?

 

んなバカな!

まさか!

そんなタイプじゃないよね?!

 

と思うけれど、見てないので

映画版を見てから考えようと思います。

 

 

 

 

 

 

さて、私が本書の中で

注目したい登場人物1位は、

伊香保で富岡がちょっかいを出した おせいです。

 

おせい は、伊香保の退屈で先の見えない生活を脱したくて

富岡をたよりに東京に出てきます。

 

相手にされてるんだかされてないんだかなのに、

結局は、彼女のアパートに富岡は転がり込む。

 

しかも、内縁の夫が伊香保から追いかけてきて

嫉妬やら何やらで、おせいを殺す。

 

富岡は、死んだおせいを気の毒がって忘れられない。

 

 

おせいの魅力とは何なのか?

ゆき子になくて、おせいにあった魅力。

富岡は、ゆき子の借家にだって行けたはずなのに

おせいのところが良かったんでしょう?

 

内縁の夫が探しに探して

最期、殺しちゃうわけだし。

 

おせいの魅力とは?!

参考にしたい。(笑)

 

あんまりそこを気にして読まなかったので

再読の際は、その点、色々考えてみたいです。

 

 

 

 

戦中、戦後が舞台の話なので、

敗戦の虚無感、無気力感が

小説全体に漂っているのも、

21世紀に生きる私の目には興味深いものがありました。

 

 

 

まだまだ、書き記したい感想はあるのですが

ざっくりとはこんな感じ。

結構前に読み終わったのに、あとを引いて、

今もあれやこれや考えてしまいます。

 

 

 

に比べて!

 

大人になったら読むぞシリーズで、

渡辺先生の『失楽園』は

キモいの一言でしたわ。

 

あれは、男の、、、

いや、先生の夢物語みたいな。

 

 

えーー

大人になったら読むぞシリーズ、

まだいくつかあるんですが、

大流行の時に、その良さが全くわからなかった

『鉄道員(ぽっぽや)』

 

 

本を読んだんだか、映画をみたんだか、

当時、ウチの父が

「グッとくるものがあったよー」

と感動したようなことを言っていて

あの時の父の歳になったことだし

もう1回読んでみたいと思います。

 

 

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