早朝、電車の中。
スマホにメールがはいった。
 

《おはよーカナメちゃん
。+.。ヽ(*>∀<*)ノ。.+。
 
これから学校でしょ?
頑張ってねー
 
終わったらデートしよ!》
 
 
 
 
………うざい

わたしは朝からどっと疲れた。
キリトと付き合う事になった翌日、劇的な回復を見せたキリトはすぐに退院した。
なんて単純な奴なんだろう。
 
 
いや、昔からあんな奴だった。
 
 

あの日から3日。
あれからケントと1度も連絡をとってない。

こんなのは初めてだ。
わたしはキリトに返信しながらケントの事を思った。
 
 
 
 
 
ケントの学校。
 
 
「ここ3日、ケントずっとあの調子だよな?」
 
「その前の日は見た事もないくらいテンション高かったのに」
 
「リバウンド?」
 
「え、テンションの?」

ずっと外を見ながらボケッとするケント。
カナメが自宅に来た時の泣き顔が頭に浮かぶ。
 
 
カナメ…どうしてんだろ
 

「ケ・ン・トっ!」
 
「おわっ!」
 
男友達が後ろから抱きついてきた。
 
「今日仕事あるのかよ?」
 
「ああ?
今日は休みだけど…」
 
「たまにはオレ達に付き合えよ。
遊びに行こうぜ!」
 
「はあ?
めんどくせーよ」
 
「いいから行くぞ!
ほれっ、カバン持て!」
 
「ちょっ…おい!」
 
 
 
 
 
-渋谷。
キリトに連絡をしたらまだ仕事だったらしく
終わるまでリザで時間を潰しててとの事。
 
スクランブル交差点で信号待ちをしていた時、横からドンとぶつかってきた人が。
 
 
(いたい…)
 
 
誰だとチラ見するとサングラスをかけたリナがいた。
 
「げっ!」
 
思わず声が出た。
 
「そんなに嫌がらないでよ。
ちょっと一緒に来て」
 
こっちを向かずにたんたんと話をするりリナに冷や汗がでた。
スクランブル交差点近くのカフェに入ると地下席に案内された。
 
 
 
リナがサングラスをはずす。
目を合わせられないカナメ。
 
「キリトから昨日、納得がいくまで話し合おうって言われたの。
私が何を言ってもキリトの意思は変わらなかったわ。
 
あなたと一緒にいたいって」
 
「…」
 
「私、ずっとキリトのファンでね、モデルを始めたのもキリトに少しでも近づきたかったからなの。
背も高かったし、努力して有名になって、ツテで芸能界を引退したキリトに会わせてもらった時は舞い上がるくらい嬉しかった。
 
初めはまったく相手にされなかったんだけど、友達が口をきかせてくれて付き合えるようになって…
私は幸せだった」
 
 
先程まで楽しそうに話しをしていたリナの顔が、コーヒーを一口飲んで暗くなる。
 
 
「でも一緒にいるようになって気付いたの。
優しいんだけど心がわたしを見てないなって。
 
あなたとはじめてRJで会った時、キリトがずっとあなたの事を目で追ってたのを見てまさか思ったけど…
予感的中で嫌になっちゃう。
 
しかもあなたと一緒にいる時のキリトって昔モデルをやっていた時の、わたしが好きになったキリトになるの。
わたしじゃキリトの事、あんな風に笑わせてあげられない。
 
だから…別れる決心をしたの」
 
 
わたしは俯いた。
 
 
「叩いてごめんなさい。
あなた、最後までキリトの事突き放してくれてたのに…」
 
「リナさん…」
 
 
潤んだ目にサングラスをかけるリナ。
 
 
「話はそれだけ。
わたしとキリトの事はもう決着がついたから後はあなたに任せるわ。
 
じゃあね」
 
「あのっ…!」
 
 
席を立って呼び止めたが言葉が出てこなくて俯く。
そんなわたしを見てリナさんがふっと笑った。
 
 
「あなた、今時珍しい子よね」
 
 
そう言って手を振ってカフェ入口の階段を上っていく。
わたしは席に座ると背もたれに寄りかかった。
 

(キリトぉー、お前にはもったいない人だよ)
 
 
同カフェ入口。
先にレジに並んで食べ物を物色してる男子集団の後ろにケントが並ぶ。
 
 
「あれ、ケント?」
 
「?」
 
 
正面から声を掛けられ「?」となるケント。
リナがサングラスをちょいと下げ、
 
 
「あっ、リナさん!」
 
「この前はごめんね。
撮影中だったのに」
 
「いえ。
ちゃんと予定通りに終わったんで大丈夫ですよ」
 
「そっか。
今カナメちゃんと話をしてた所なの。
 
あの子、ケントの幼馴染なんですって?
いい子よね」
 
「えっ、カナメがここにいるんですか!?」
 
「ええ、地下にいるわ。
ケントにも今度何かごちそうするわね。
 
 じゃあわたし、これから撮影だからまたね」
 
 
手を振り店を去ったリナ。
 
 
(カナメとリナさんが話しって…キリトさんの事だよな?)
 
ケント、何も頼まず地下に直行。
 
 
「おい、ケント!?」
 
「席取りしてくれてんじゃねーの?」
 
「何だ、気がきく奴だな」
 
 
階段からカナメを探した。
 
 
(いた!)
 
 
ケント、椅子を引きカナメの席の向かいに座る。
 
 
「!」
 
ブハッ! とカナメがアイスコーヒーを吹いた。
 
「汚ねっ!
何やってんだよ、お前は!」
 
「そのままアンタに返すわ!
何でここにいるの!?」
 
「カフェの入口でりなリナさんと会って…
お前がココにいるって言うから…」
 
「ケント…」
 
 
2人の間に沈黙が流れたと思ったら周りが騒がしくなる。
 
 
「うわっ、ナンパかよケント!
やるなお前っ!」
 
「!?」
 
 
男子高校生に囲まれ驚くカナメ。
 
 
「ナンパじゃねーよ。
オレの幼馴染」
 
「だ…誰?」
 
 
ぼそっとケントに聞くカナメ。
 
 
「学校の友達。
今日仕事オフだったから一緒に遊びに来たんだ」
 
「あ、そう…」
 
 
カナメがケントの友人達に「こんにちは」と頭を下げる。
 
 
「超かわいー!彼氏はいるの!?」
 
「えっ!?あの…
(ケントの前でその話しはするなよ!)」
 
 
困っているカナメの姿をみてケントが、
 
 
「ちょーイケメンの彼氏がいるよ!
手ェ出すなよ、お前ら!」
 
「マジで!?
そうだよな~、かわいいもんなー」
 
 
ガクッと落ちるお友達。
ふんっとカナメと目を合わせなくなったケント。
 
それを見てカナメが居心地悪くなる。
 
 
「あの私、そろそろ帰るね…
じゃあね、ケント」
 
 
申し訳なさそうに席を立つカナメの腕を慌てて掴むケント。
 
 
「話し…あるんだけど…」
 
「…」
 
 
立ち止まりケントを見つめるカナメ。
友達に席を外してもらう。
 
 
「…久しぶりだな。て言っても3日か」
 
「うん。
わたし、ケントに2度と口を聞いてもらえないの覚悟してたから…
びっくりしたな」
 
 
きゅんとするケント。
 
 
「リナさんがお前と話してたって言うからキリトさんの事だなって。
 
あの日…
オレ混乱して話しもちゃんと聞かないで出てきたからお前とはもう一度話しをしなきゃって思ってたんだ」
 
「そっか」
 
「キリトさんと…付き合うのか?」
 
「うん」
 
 
ズキンとするケント。
 
 
「お前…
この前キリトさんが倒れたのは自分のせいだって言ってたよな?
 
それってどうゆう意味だよ」
 
「…芸劇で初めてキリトと会った時、私がキリトの知り合いにそっくりだって言ってたの覚えてる?」
 
「あぁ」
 
「キリトがその人とわたしを混同してるんだ。
わたしがいないと不安で気分が悪くなったり倒れたりしちゃうんだって」
 
「そんなのキリトさんの心の問題だろ?」
 
「そうなんだけど…
(一番の原因はアッシュなんだ。)
 
 私でどうにか出来るなら力になりたいじゃん」
 
「…カナメ、お前キリトさんの為に自分を犠牲にするつもりか?」
 
「犠牲とか大袈裟だなー…」
 
「大袈裟じゃねーよ!
お前の意思がまったくないじゃん!
 
お前がキリトさんを好きならオレだってこんな事言わねーよ!」
 
「ケント…」
 
「そんな理由じゃオレは引かないぞ?
キリトさんが倒れようがお前に別れ話しされようが絶対諦めないからな!」
 
「やめてよ!」
 
 
ケント、びくっとする。
 
 
「キリトは…大事な奴なんだ。
倒れたのを見た時は本当にぞっとした…
 
あんなの見てほっとける訳ないじゃん…」
 
「…ああそーかよ。
じゃあ勝手にしろ!」
 
 
ケント、乱暴に席を立って店を出ようとする。
それを見た友達が慌てて後を追う。
 
 
店内が少しざわつく。
カナメ、頭を抱えて深い溜め息をつく。
 
 
 
ブルルルル 
 
スマホを見る。
キリトから仕事終わったから店においでメールがきた。
 
 
わたしは憂鬱な気分のまま店をでた。