「カナメちゃん!?」
 
 
 
エレベーターに乗り込んだカナメに置いていかれないように慌ててキリトも乗った。
 
 
 
「どうしたの、急に!」
 
「ワールドに行かないと…
ケントが…モデル辞めちゃう」
 
「カナメが行ってどうなる訳じゃないじゃん。
ケントが決めた事なんでしょ?」
 
「わたしのせいだ…
わたし…さっきケントの事怒らせて…」
 
 
 
身体を小刻みに震わせ青くなるカナメ。
その姿を見たキリトは、
 
 
 
「わかった。オレも行く」
 
 
 
外にでるとカナメの手を引いてタクシーを止めた。
 
 
 
「渋谷のワールド・エンターテイメントまでお願いします!」
 
 
 
タクシーが走り出す。
 
俯くカナメ。
キリト、カナメの手をぎゅっと握る。
 
 
 
 
 
渋谷-ワールド・エンターテイメント。
 
キリトがカナメの手を引き入口を走り抜ける。
 
 
 
「久しぶりエリちゃん!
急用だから後で入館手続きするね!」
 
「え!?キリトくん!?」
 
 
 
エレベータに直行する2人。
受付嬢のエリちゃん唖然。
 
 
 
「…はぁー、相変わらずいい男ね…」
 
 
 
 
 
社長室と掲げられた扉にノックもなしにバンッと入る。
 
 
「!」
 
 
中にいたのはケントとカイト、それにキリトの母親…
ワールドの社長がいた。
 
3人とも驚いた表情でこちらを見ている。
 
 
 
「キリト!?それにカナメ!」
 
 
 
ケント、キリトとカナメが手を繋いでるのを見て顔をしかめる。
 
 
 
「じゃあオレ、これで失礼します」
 
「おいケントっ、
話はまだ終わってねーぞ!」
 
 
 
カナメ、キリトの手を振り払ってケントの腕を掴む。
 
 
 
「すみません、少しケントを借ります!」
 
「は!?
おいっ、カナメ!」
 
 
腕を引っ張って社長室から出る。
 
 
「カナメ!?」
 
「行くなキリト!」
 
 
 
カイトが付いて行こうとするキリトを止める。
2人は走ってどこかへ行ってしまった。
 
 
 
「へぇー、今のが噂のカナメちゃん?
 かわいい子ねぇ。
 
ウチでモデルやってくれないかしら?」
 
「社長、そんな事言ってる場合じゃないですよ」
 
「何で止めたんだよカイトさん!」
 
「ちょっとキリトー、久々にお母様に顔見せたってゆうのに挨拶なしなの?」
 
 
 
話しが飛びまくってて匙を投げたいカイト。
 
 
 
 
 
屋上。
 
カナメ、ケントの腕から手を離す。
 
 
 
「何でお前がワールドにいるんだよ!」
 
「ケントがモデル辞めるって聞いたから来たんだよ!
わたしのせいでしょ!?」
 
「お前に関係ないだろ!」
 
「じゃあ何でモデル辞めるの!?」
 
「関係ないっつってんだろ!」
 
 
今まで聞いた事ないケントの罵声に尻込みするカナメ。
 
 
「…何なんだよお前。
オレの事突き放しといて言い寄ったり…
 
あちこちにいい顔すんな!
腹立つんだよ!」
 
 
 
わたしは黙ってしまった。
 
 
 
「もうほっといてくれよ…」
 
「…ほっとける訳ないじゃん。
ずっと一緒にいたんだから…」
 
 
 
ケントがカナメを見る。
 
 
 
「わたしはケントが努力してモデル続けてるのを知ってるから…
 簡単に辞めないで欲しいんだ。
 
それにケントのファンだって沢山いるのに…」
 
「オレはずっとお前の理想に近づきたくてモデルやってたんだ。
いつもカナメが側にいたから頑張ってこれたんだ。
 
そのお前がいないんだったらオレにはやる理由がないんだよ!」
 
 
カナメの頭の中で自分のせいでモデルを続けられなくなったキリトの姿が浮かんだ。
 
 
 
またわたしのせいで誰かが何かをやめなきゃいけないのか?
 
 
 
「…ケント、わたしはこの世界からいなくなる訳じゃないんだよ?」
 
「……は?
何言ってんだよ」
 
「これからだって会いたい時に会えるんだからわたしの我侭のせいでケントの努力を無駄にしないでよ」
 
 
 
悲しそうなカナメの顔。
奥に深い意味があるのかなぜかストンとカナメの言葉が心にはいってきた。
 
 
 
「…ごめん、カナメ」
 
 
 
 
社長室。
 
「…ってゆう事なんですよ」
 
「成る程ねー。
三角関係のもつれでこんな事になってるのね。
 
キリト、あなたいい歳して若い子に手を出すんじゃないわよ」
 
「カナメは別!
…ケントには悪いけどカナメは絶対に譲れない」
 
「お前、ケントが本当にモデル辞めたら責任とってもらうぞ?」
 
「あら、それいいわね!
カリスマ復活?
 
またウチの会社にバブルが来るわー」
 
「母さん…」
 
 
 
ガチャリと社長室の扉が開く。
カイトとキリトがこちらを振り返る。
 
カナメと俯き加減のケントが立っていた。
 
 
 
ケントは社長の前まで歩いていき頭を下げた。
 
 
 
「…社長、すみませんでした。
オレ、モデル辞めません。
 
これからもここでモデルを続けさせて下さい!」
 
 
 
一拍の沈黙が流れる。
 
 
 
「当たり前じゃないの~!
これからも頑張ってよ、ケント!」
 
「ありがとうございます!」
 
 
 
カナメとケントが喜びのハイタッチ。
安心してフッと胸を撫で下ろすカイトさん。
 
 
 
「ところでカナメちゃん、ウチでモデルやらない?
(給料)はずむわよ~」
 
「あはは、興味ありません」
 
 
 
和気藹々な室内に皆笑っていたけどキリトだけが神妙な顔つきをしていた。
 
 
 
「よし、騒動も収まったしみんなで飯でも食いに行くか」
 
「「やった!」」
 
 
カナメとケントが声を合わせて喜んだ。
 
 
「カイトくん、それ領収書きってきていいわよ。
 どうせだったらいい所で食事してらっしゃい」
 
「ありがとうございます!」
 
「ちゃんとついて来いよカナメ!」
 
「わかってるよ」
 
「では社長、お先に失礼します」
 
 
 
カナメはお辞儀をし、社長室を後にした。
最後にキリトが出ようとした時、
 
 
「カナメちゃん、アッシュ君にそっくりね」
 
 
社長の言葉にキリトが振り返る。
 
 
「でもアッシュ君じゃないんだからね?
 それだけはちゃんと覚えておきなさいよ、キリト」
 
「…わかってるよ」
 
 
 
扉が閉まる。
 
 
 
「本当にわかってるのかしらね、あの子」

皆が居なくなった部屋で1人つぶやく社長。