今日、フェイスブックを見ていて、マタギに関する動画がシェアされていたので、以前に聞いた「マタギのお話」の続きを書かせていただきます。
マブリット・キバさんから聞いた話の続きです。
マブリット・キバさんが育てられたマタギ衆は、
普段は、山刀一本で獲物をしとめ、鉄砲を使わないことを誇りにしていました。
そして、鉄砲を使う時でも、普通の玉以外に特別な「銀の玉」一つだけ皮袋に入れて持ち歩いていました。
これは、必ず仕留めることができる特別な玉で、
「この銀の玉を撃った時はマタギを引退し山を降りる」
という最後の玉とされているものでした。
ある時、罠を掛けているのに全く獲物が捕れない日が続いたそうです。
「これは、よそものが山に入ったっということだな。」
そこで、マタギ衆の一人が見に行くことになりました。
山に入ると、大きな白い「老狐」が
目の前をゆっくり横切り、マタギの目を見ました。
「こいつが入ってきたのか!
これは、かなりの霊力を持っているぞ!」
普段は、鉄砲を使わないのですが、
この時ばかりは鉄砲を撃とうとしました。
ところが、どういうわけか、
首にかけた「オオカミのキバ」に引っかかって
引き金が弾けなかったのです!
「老狐」はゆうゆうと去って行きました。
他のマタギ衆は、山に入ったマタギがなかなか帰ってこないので
心配していると、
放心状態で山から下りてきたマタギが
囲炉裏の前であぐらをかき、
何時間も黙って一人で酒を飲みだしたそうです。
そして、鉄砲の銃口を見て
「わしの負けだ! 明日から山を降りる!」
と叫びました!
なんと、銃口には泥が詰まっていました。
そして、銃には銀の玉が籠められていたのです。
もし、あの時、オオカミのキバが引っかからなかったら
引き金を引き、銃が暴発していたことでしょう。
オオカミのキバが守ってくれたのです。
「老狐」は、自分の寿命を感じ、
死に場所を探しに、この山にやってきたようです。
そして、どうせ死ぬなら、
腕の立つマタギと刺し違えて死のう
ということだったようです。
しかし、「オオカミのキバ」
のお陰でマタギの銃は暴発を免れ、
マタギは、山を降りて、町役場の書類整理係り
老狐の方も、「オオカミのキバ」
のせいで、刺し違えることができず
その後、山で死んでいるのが見つかったそうです。
「痛み分け」といった結末ですね。
その後月日が流れ、
マタギ衆も歳をとり、みんな山を降りることになったそうです。
マブリット・キバさんは、
育ててくれたマタギ衆の恩に報いるように
老人ホームに入れ、お世話したそうです。
「《無形文化財》としてマタギ衆の伝統を残して欲しい」
との声もあったそうですが、
「もう、マタギの時代は終わった!
肉が欲しければいくらでもスーパーで買える時代になった。
俺たちの役目は終わったのさ」
と言って、山を降りたそうです。
それにしても、日本のマタギに伝承されてきた
自然や動物と共に生きる人たちの高い精神性
これは語り継いでいって欲しいものだと思いました。
《全5話となってますので、最初からお読みください》