夕闇。
足音2つ。
狼の遠吠え。
すすり泣きのような音。
不気味だ。
これだから、夜は嫌なんだ。
人間は夜行性じゃあないのに。
夜は、大人しくベッドに入っているべきなのに。
『お腹空いたよ……』
そんなの、僕だって同じだ。
僕だって、お腹と背中がくっつきそうだよ。
流石にこんなに食べなかったのは初めてだし……。
『足、痛いよう……』
それも僕だって同じさ。
いくら僕の方が大人だからって、背の高さは変わらないんだぞ。
歩いてる距離は一緒だから、単純に考えて足を動かしている回数も変わらないんだ。
『お兄ちゃん、私、もう疲れた……』
煩いなぁ。
グレーテルの声は高いから頭に響くんだよ……。
『いつになったら休憩するの?もう、ここら辺で休もうよぉ……』
………ああ……。
もう……。
『ねぇ、おにぃ『うるせえなッ』』
もういい加減にしろよ⁈
さっきから……。
『一人でブツブツブツブツ……。耳障りでうるせーんだよ‼俺は今一生懸命やってんだよ、甲高い声でキーキー鳴いて邪魔すんじゃねぇよ‼おい、解ってんのかよ、俺は今泊まれるところを探してやってるんだよ。お前はまだガキで女だから野宿を避けようとしてやってんのに、文句ばっかり垂れてんじゃねえよ‼』
『…ッヒ……っく……』
あーあ……。
また、自分の“嫌いな自分”がでてきてしまった。