犬の弁膜症に関するトピック 〜時間作用型ループ利尿薬の有用性といつから使う?〜 | みなとまちアニマルクリニックの「裏」ブログです。

みなとまちアニマルクリニックの「裏」ブログです。

こんにちは。こちらは「非公式」ブログです。書いている内容は、あくまでも著者の一意見であり、賛否のご判断はお任せします。読み飛ばす程度に呼んでください。僕は自戒のつもりで書いてます。

 

心臓病に利尿薬?と思われるかもしれませんが

 

心臓が役割を果たさなくなると

 

どうしても心臓の中で血液が渋滞します。

 

その渋滞は心臓に帰ってくる血液にまで波及して

 

心臓の手前、肺での大渋滞につながります。

 

僕なんか日頃から待つということができない性分なので

 

渋滞下では必ず迂回路を選択します。

 

僕みたいなやつが肺に水を貯めるんですね。

 

肺に水がたまる状態を肺水腫と言います。

 

肺に水が溜まったら苦しそうですよね。

 

なので水を追い出すために利尿薬を使うんです。

 

肺には針を刺して水を抜くことができませんので

 

尿として排泄できるように促してあげるしかないんです。

 

2009年までのガイドラインではフロセミドというお薬一択でした。

 

僕が獣医になってからも

 

肺水腫の治療はフロセミド一択でした。

 

フロセミドが効かなければ・・・

 

自力で呼吸しても酸素化できないので

 

人工呼吸器につなげるなんてことを何度も経験しました。

 

フロセミドが効かなくなると

 

その人工呼吸器を飼い主さんの判断に委ねて切ることになります。

 

中々判断ができない飼い主さんがいて(当たり前だ)

 

何時間も処置室に飼い主さんの泣き声と自分の無力感だけが彷徨います。

 

その時間は獣医師の心身を削るのに異論はないと思います。

 

正直、あの時間を何度か経験すると

 

他のことなんか取るに足らない出来事のようにも感じます。

 

獣医師が世界最高の自殺率を誇ることのある意味証左なのかもしれません。

 

利尿だけでなく強心薬の注射薬が出ることも

(2019年に国内では発売されますが、輸入して使用している病院も多かったと思います)

 

上記の状態改善に一役買うことになるのですが

 

最近ではフロセミドではなくトラセミドという利尿薬が検討されるようになったことも

 

上記のような状態改善、そもそもの予防に一役買ってます。

 

2020年の報告では

 

初回の肺水腫後の心不全治療としてのトラセミド有用性を検討しています。

 

めちゃ要約しますが、フロセミドと比較してよく効くよというデータです。

 

ただし、切れ味が良すぎるというのも僕の印象です。

 

ちゃんと説明して後追いさせていただかないといけません。

 

2019年のガイドラインでは

 

ステージCにおいて0.1~0.3mg/kgSIDからの使用推奨を

 

ステージDにおいて0.1~0.2mg/kgSID~BIDでの使用推奨がされています。

 

アプガード(商品名)の添付文章では0.1~0.6mg/kg SIDと記載されています。

 

あ、少し専門的になりすぎましたね。

 

ここで僕が言いたいのは

 

未だにフロセミドだけで管理されている子たちが多い現実と

 

このACVIMだけでトラセミドがいいならという感じで適当に使用している場合が

 

案外に多いんだなと日々の診察で感じることです。

 

そうじゃなきゃうちみたいな3流病院に

 

セカンドオピニオンなんかたくさん来ません。

 

本当はセカンドオピニオンなんて

 

上記のトラセミドの量を検討するようなところから始まれば

 

僕のような8流獣医の出番はないのですが

 

案外にも自分の情報量が上回ることで満足いただけるシーンが多い事実に慄然としています。

 

あ、そうだ、明日のブログはこの慄然について書いてみましょう。

 

では。

 

image