長らく旅を続けて参りまして
大学時代はパリに詣でると
Mairie de Saint-Ouenという郊外の駅にある日本人宿に宿泊するのが常でした。
女子男子迷わず雑魚寝のストロングスタイルで
朝食夕食のブッフェで白米が出されることと安さが売りの宿でした。
当時1000円台で宿泊できました。
今も思い出すのは僕の幼馴染で多分今まで知り合った人間の中で最も頭のいいMという輩がいるのですが
そいつがドリームハウスで分厚い哲学書を片手に孤高を決め込んで村八分になったのでした。
安宿には大概お局的な形で沈殿している輩がおります。
ただそこに長くいるというだけが取り柄なのですが
大抵のことはそいつが取り仕切ります。
その時には「大将」と呼称されている40代前半脱サラ100キロ台の巨漢がおりまして
Mはそいつに反感を覚えたのでした。
僕は2秒くらいでそいつに取り込み、宿に宿泊している様々な方々と酒を酌み交わすなどして
楽しく過ごしていたのですが、ふと脇を見るとMが寂しそうにこちらをみているという風で
でもそれはMが悪いわけだし、仕方ないわけです。
寝る場所すらも大将が差配するので
僕はまんまと2段ベッドの下段を手にいれることが出来ました。
(もちろんMは居間に雑魚寝スタイルで場所を与えられています)
僕らは南フランスへの旅程があるために
出発日は朝4時くらいに辞去する運びとなったのですが
その際にMは世界の歩き方を数冊拝借しました。
当時は世界の歩き方がないと旅するのは非常に難しく
なんとMはそれを成田空港で購入し、トランジットの空港に置いてきてしまったのです。
今なら時効だと思うので白状できますが、やったのは僕です。
勝手にMの鞄に入れました。
(後日使用した後に送りました。)
多分Mのせいになるだろうなと計画した犯行で本当に矮小な人間です。
でもMは本当に君はとそれをすごく面白がるわけです。
なんで今こんな話をしたかというと、なんとなく大山に被るからです。
(損しても自分を貫ける部分が
その旅程の最後にMは一文無しになりました。
なんの疑いもなく一文なしです。
Mの親御さんは有名なお医者様で開業医でも在られるので
カードを与えられておりましたが、途中で使用不可になりました。
パリ北駅というカオスな場所の安宿になっがいフランスパンを持ち込み
あと二日それで耐えるしかないと悲痛な面持ちでした。
(ちなみに1日でパンを食べ終えてしまい、残り1日はめちゃくちゃ耐えてました)
僕も一文無しになったふりをし、一人で外に出ると豪遊し、それを動画に収めて作品にしました。
当時はお芝居とDJに明け暮れていたMですが
数ヶ月後にそれを見ると、君ほど役者に向いてる人はいないよと感嘆していました。
なんというか、診察室は舞台で、どこまで行っても僕は演じてる気になるんです。
演じてるわけじゃないんだけど、演じてるんです。
どこに本当の自分がいるのかがわからない。
ただ面白そうだからしてるだけで、今も旅行に行かないと蕁麻疹が出てくるのは
本当の自分を探してるからかもしれませんね。
そこから13年が経ちました。
今宿泊するのはパリ1区です。
自分でも信じられません。
僕自身はどこでもいいんですが、妻を連れてるとなると立地はいいに越したことがありません。
今でも貧乏旅行に慣れているので、カフェやレストランに入る気がしません。
ということで今回はキッチン付きの宿にしました。
二泊したうちの一泊目はいつものように妻が作りました。
そして思ったんです。
そうだ、料理をしてみようと。
もしかしたらそこに本当の自分がいるかもしれないと。
うん、いいじゃない。
水蒸気と一緒に僕の色々がパリの喧騒に吸い込まれていくようで気持ちいい。
結局本当の自分は見つかりませんでしたが
美味しかったです。
















