結婚したいときの話 | 星野洋品店(仮名)

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とある洋品店(廃業済み)を継がなかった三代目のドラマ感想ブログ

平安貴族男性であるあなたが、とある姫君が素晴らしい女性だと聞きつけたとしましょうか。平安時代ですから歌を贈って口説かなきゃなりませんが、自信がなければ代作を頼みましょう。それが誠意。

 

「そちらのお屋敷に、教養ある女性が住んでいると聞きました」

 

すると、姫君の乳母から返事が来ます。

 

「ハァ? アホか!」

 

落ち着いてください。これは脈アリです。脈がなければ返事も来ないよ。もう一首贈ってみましょう。

 

「そのお屋敷の姫は教養があると、大変な評判です」

 

また乳母から返事が来ます。

 

「え~、そんな噂が流れてるんですかぁ~?」

 

噂を流したのは乳母ですけどね。お仕えする姫君の良い評判を立てることも乳母の仕事のひとつですから。さらにもう一首贈ると、姫君本人から返事が来ます。「教養があるという評判のわりに、字が下手だな」なんて思っちゃダメですよ。あなただって歌の代作を頼んでるんだから、乳母がちょっと話を盛るくらいは許しておやりなさい。

 

ここまで行くと親公認の交際になります。相手の屋敷を昼間に訪ね、父親と会っているところを姫君に覗き見てもらったり、御簾越しに姫君と話したりして交流を深めます。そして、お互いにオーケーとなれば夜に姫君の部屋に忍び込むわけです。

 

暗くなってから来て、夜明け前に帰るのがマナー。三夜つづけて通い、二人で〈三日夜(みかよ)の餅〉を食べれば結婚成立です。翌日以降に姫君の父が〈所顕(ところあらわし)〉という宴を開いて婿と従者をもてなし、娘との結婚を承認します。勝手に結婚すると、パパが怒っちゃって所顕をやってくれないこともあるので、手続きはちゃんと踏みましょう。ちなみに光源氏は紫の上との結婚で、すべての手続きをすっ飛ばしました。サイテー。三日夜の餅はいちおう食ったけど。

 
男性は実家から複数の女性のもとに通い、長男・長女を生んだ女性が嫡妻、嫡妻の家が自宅という感じになっていきます。兼家パパの場合、寧子さん(道綱の母)が次男 道綱しか産めなかったので、嫡妻の座は時姫(道長らの母)のものになりました。せめて長女を生んでいればねぇ。
 
ただ、上級貴族は親が決めた結婚相手が嫡妻になります。倫子さんは最初から道長の嫡妻で、しかも長女を生むという、摂関期の究極の勝ち組なのよね。その後も二男四女に恵まれ、別妻 源明子に圧勝します。……あー、なんか、「不幸になってほしい」と思ってしまったわ。