『光る君へ』第1回は、玉置玲央演じる藤原道兼がまひろの母・ちやはを殺害するという衝撃のラストでした。玉置玲央のぐぬぬ顔、イイでしょう? NHK『大奥』の黒木役のぐぬぬ顔も最高でした。NHKはわかってるな!
血しぶきを浴びたまま東三条邸に戻った道兼について、
「平安貴族は血の穢れを嫌うので、あんなのはありえない!」
というネット上の意見を見ました。まあ、そういう面もあるっちゃあるんだけどね。
日本古来の考え方で、ハレ(晴)とケ(褻)の対立というものがあります。ハレは普段と違う時間、ケは英語でいうと Life ですね。生活・生命・人生と訳せますが、普段通りの時間のことです。お正月などに着る豪華な着物を「晴れ着」と呼ぶのは、天候の晴れではなく、〈普段と違う特別な〉の意味のハレです。
ケの状態に問題が起きることをケガレといいます。〈褻枯れ〉と解釈されます。死は人生が終わること、血が流れることは生命力が失われることだから、ケガレなのです。また、出産も普段の生活とまったく違う出来事であり、出血もあるのでケガレとされます。
ケガレは伝染するともされます。たとえば、野良犬が床下に入りこんで死んだ場合、その屋敷や居合わせた人がケガレます。そして、屋敷を訪ねてきた人や、ケガレの状態の人に会った人もケガレを移されてしまいます。なので、うっかりケガレてしまった人は数日から数十日閉じこもり、ほかにケガレを移さないようにします。
ケガレはイヤなものだけど、ケガレそのものが困るというより、外出できなくなるのが困るのね。だから、こっそり犬の死体を片付けて、目撃者を口止めして、ケガレをなかったことにすればいいんだよ。バレなきゃオッケー。実際、使用人が死んだことを隠して客を迎え、あとでそれがバレて客が激怒した、なんて話も伝わっています。
道兼さんの場合、目撃者がまひろとその従者、自分の従者だけなので、さっさと逃げて自分の従者の口さえ封じておけば大丈夫でしょう。三郎(道長)に見られちゃったけど、三郎だって馬鹿じゃないので、自分の家に災いが降りかかるような証言はしないと思います。