『光る君へ』第1回「約束の月」の話 | 星野洋品店(仮名)

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とある洋品店(廃業済み)を継がなかった三代目のドラマ感想ブログ

2024年1月7日(日) 20時 放送スタート

 

2024年の大河ドラマは、安倍晴明役・ユースケ・サンタマリアのどアップからのスタートでした。立烏帽子をかぶってると、『麒麟がくる』のオモシロ朝倉義景役を思い出すね。しかし本作では笑いは一切なく、晴明の予言通り天候が(おそらく政界の雲行きも)荒れはじめました。「ぽわぽわした宮廷絵巻なんか書く気はないよ!」という脚本家・大石恵の宣戦布告だったんですね、いまにして思えば。

 

雨は藤原為時邸にも降り、雨漏りが幼い〈まひろ〉の顔を濡らします。散位(位階だけあって官職がない状態)の為時には、屋根を直す金も飼っている小鳥にやる餌代もない。小鳥はシジュウカラ(四十雀)ですかね。ツツピーツツピーと鳴いていました。

 

シジュウカラ 

 

籠の鳥と言えば、源氏物語「若紫」帖、光源氏が藤壺の宮の姪(のちの紫の上)を垣間見るシーンを思わせます。

「雀の子を犬君が逃がしつる、伏籠のうちに籠めたりつるものを。」

 

スズメの子を犬君(いぬき。人名)が逃がしてしまったの。籠に閉じ込めておいたのに。

うっかり屋の女童(めのわらわ。召使の少女)の失態を訴える紫の上に、祖母の尼君は、「生き物を閉じ込めるのは、仏の喜ぶことではない」と諭します。この様子を見ていた光源氏は、紫の上を連れ帰って自分好みに育てようと決めます。小鳥を閉じ込めるのはダメで、少女を閉じ込めるのはええんか。どロリコンめ!

 

 

逃げだしたシジュウカラを追ってまひろが出会うのは、光源氏よりずっとバランスの取れた人格の三郎(のちの藤原道長)。いいねぇ。平安朝の Boy meets girl! こういうのでいいんだよ。否、こういうのがいいんだよ。

 

……と油断していたら、ラスト6分にスゴイのをぶっこんできましたね! 藤原道兼がまひろの母を刺殺! おいおい、まさか花山天皇を上回る人が出てくるとは思わなかったぜ。

 

この当時、蔭位(おんい)と言って、親の位階が高ければ息子も自動的に高官になれる制度があります。苦労知らずの坊ちゃん貴族たちが人を人とも思わず、ついカッとなって喧嘩沙汰になるのは日常茶飯事。もうちょっと時代が下ると武士が暴力担当になりますが、平安中期だと自分でやっちゃうんだよな……。

 

第1回で円融天皇に入内した詮子(吉田羊)が、同母兄弟のうち末弟の藤原道長だけをなぜか贔屓したことは、歴史上の謎です。本作のブチギレ道兼くんの設定は、この謎への一つの回答なのかもしれません。長兄の道隆(井浦新)は早くに亡くなり、その跡をついだ伊周(これちか)・隆家兄弟は、このブログでも触れたことがありますが、〈脳のつくりが粗雑なマイルドヤンキー〉ですし。一家のムードメーカーである道長を頼りにするのも無理はないってところかな。

 

1/21 追記

再放送を見直したら、小鳥はヤマガラでした。おなかが赤茶色。

 

ヤマガラ