神様なんていなかったんだ。
今日で七回忌。
あの人を忘れたことなんて一度もなかった。
結婚の約束をして、式の準備もして、両親と会ったり。
毎日が楽しくてハッピーだった。
彼は、病気になった。
体の病気じゃなくて、うつ病。
「ツライから寝かせておいてくれないか」
サインも出していたのに気付けなかった。
いつも毎日一緒にいたのに。
同棲してから3年経っていた。
「また眠いの?今月ピンチなんだから休まないでよね」
そんな冷たい言葉を私は彼に言ってしまった。
「最近寝られないんだ。頼むよ何だか具合が悪いんだ」
風邪かと思っていた。単に体調を崩してる。そう思っていた。
「今日会議なんでしょほら、支度して私もすぐ出ちゃうから」
そう言って私は会社に向かった。
彼は思い悩んでいた。
そう、彼の両親から聞いた。
『結婚してちゃんと養えるのか。
子供が出来たら自分の稼ぎで食わせていけるのか。
そもそも自分なんかと結婚して彼女は辛くないのか。
生きていても辛いだけだ。
一日生きていくのに精一杯で、愛想つかれたらどうしよう。
夜も寝られない。
考えがまとまらない。すぐ疲れてしまう。
落ち込んでいる感じが拭えないんだ。
どうしたらいいんだろう。』
日記をつける彼の最後の日記。
彼は布団から出られなかった。
出たくても出られなかったと聞いた。
重たい体を起こすのが疲れてしまうと聞いた。
単に怠けていると思っていた。
「頑張ってよね」
そんな言葉を毎日かけ続け、彼を苦しませた。
彼は重圧に押しつぶされそうになっていたんだ。
その日、彼の母親から電話がなった。
彼が首をつったと聞こえた。
急いで家に向かうと彼はもういなかった。
病院のベッドで舌を垂れ流し、苦痛に顔を歪ませた彼がいた。
声にならないほど泣いた。
日記を読み、自分のせいだと責めた。
彼の両親は、昔からこういう性格だった。
君のせいじゃないと言ってくれた。
でも、実質私のせいだと思った。
あの時気づいて病院いかせれば死なずに済んだ。
私は彼を忘れてはいけない。
私はその部屋に住み続け、今も彼氏は作っていない。
彼は私の支えであり、婚約者だ。
最後の日記の次のページには
「ごめんなさい」
と10行書かれていた。
謝るのはこっちのほうなのに。
勝手に死ぬなんて卑怯だよ。
と彼を責めた時もあった。
私は明日も来年も。これからも忘れることはないだろう。