(前回記事)

岡本荘物語(4) 
抱きしめ崩れる
2023-09-25

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12821682321.html

 

(今回記事)2007/03/07 著

私はE子と婚約したことを小寺君や小谷君、それに岡本荘の住民でもある1回生の細谷君達に伝えた。
以降、私は何の躊躇もなくE子の部屋に出入り出来た。

この学生アパートの大家の小母さんは度々見かける私の事を「E子の男」と呼んでいたようだ。

小谷君は我らが婚約したことを妹峰ちゃんに喋った。

岡本荘物語(1) 
友の高校生の妹峰ちゃん
2023-09-22 

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12821166301.html

 

峰ちゃんが兄貴に言うには、「和歌山信愛高での『水無瀬フアンクラブ』を『E子から(私を)守る会』に名称変更し、守る会の会員は三十名を超えた」とのことである。

更に「今度の日曜、和歌山からここ上賀茂の岡本荘に来て、E子と団体交渉すると言ってきている」との由。

私も小谷君もメンバーはせいぜい十人くらいで、妹達は京都に遊びに来るだけと思っていた。

当日、E子は所用で夕方まで留守にすると言うので、この件は伏せておいた。




処が、学生アパートの小谷君の六畳の部屋は無論の事、幅一間奥行き十間程の板の間廊下と、更に表の道路に『E子から(私を)守る会』の会員である制服姿の信愛女子高生であふれているらしい。

間が悪いことに、E子が予定変更で帰ってきたと言う。
こんなに大勢ではE子の6畳間には入り切れないから、代表者を数人に絞り、部屋でE子と話し合いとなった。無論、流石峰ちゃん、兄小谷君をその中には入れなかったとか。

表道路は女子高生の人だかりとなり、大家がカンカン。
話し合いは一時間程で、峰ちゃんの団体は帰ったらしい。

この時の話し合いは、どんな内容であったのか、今もって知らない。E子に聞かなかったし、E子も話さなかった。

その騒動から暫くしてから、小谷君の部屋の扉の上に、大家がはさんだピンク色の手紙を、同じアパート住民で大学一回生の細谷君(仮称)が見つける。

私「妹の峰ちゃん(仮称)からの手紙だろうよ」
細谷君「妹が兄貴にピンクの封筒で手紙を出しますか?」

それもそうだ。
細谷君「そっと、取って来ましょうか」
私「よっしゃ!」

小谷君の向かいのE子の部屋で、細谷君・E子・私の三人、皆、微笑み、至極の思い。

 


私「かみそりは?」
E子の差し出した剃刀の刃を、ピンクの封筒の裏側お尻の糊付けした箇所(図、黒線)に斜めに入れる。こうすると、1ミリ弱程の糊しろができ、後で再度糊付けが可能なのである。

『先日は、突然で、あなた様には大変ご迷惑をおかけいたしました。(~~~うんぬん)』


峰ちゃんの同級生の真紀ちゃん(仮称)からである。

賢い事は峰ちゃんから聞いている。成る程、級長だけのことはある。先日の「E子から守る会」のメンバーが大挙で岡本荘に押しかけ騒いだ詫び状である。

だが、このまま糊で封をし、元のドアに返しておしまいじゃ、単に手紙を盗み見しただけのこと。つまらん。


細谷君「小谷先輩はズボラですから、返事など出しませんよ。こちらで小谷先輩の名前で返事を書きましょうや」
成る程、一理ある。返事を出さなきゃ失礼にあたる。

文面は、三人で討議! 女性としてどんな手紙がうれしいか!!E子の意見を尊重。
それに基づいて、先ずは、かる~い内容にしたためる。

最後尾に一言追加『あなたに再び出会えて、あなたの素晴らしさに改めて心ときめきます』とね。それを投函。


無論、開封した真紀ちゃんからのピンクのお手紙は、改めて糊で封印し、何事も無かったように元の小谷君の部屋のドアに差し込む。

十日程してから、再度、ピンクの封筒がドアに挟まれていると言う。

           つづく

 

岡本荘物語(6) 
白昼夢
2023-09-27 

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12821978087.html

 

 

岡本荘物語《目次》
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