(前回記事)
心の履歴(99-2) 余談②;
近江五個荘商人とは
2023-08-20
https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12816983325.html
(今回記事)
近江商人の精神、VHS「てんびんの詩(うた)」
私が会社のプロジェクターでVHS「てんびんの詩(うた)」を観たのは、確か、30代後半のことだったと思います。
いつものこと、一緒に観た上司や同僚の大半は、「あれはあれ、我社とは無縁の事」と偉ぶるだけです。
処が、このVHSは大企業でも放映され、特に、新人教育の一環として使われたようです。
そして、これを観た大半の人が、涙を抑えきれなかったのです。
無論、これを観て感動し涙したからと言って、自社の仕事に役立てることが出来るとは限りません。
翌日から多くの人は日々の業務やノルマに追われ、この感動を仕事に生かしきれずに、忘れてしまうのです。
熱心な浄土真宗の門徒である伊藤忠商事の初代伊藤忠兵衛のように、この精神は、会社の理念として称えられてこそ企業に浸透するものでしょう。
初代伊藤忠兵衛は、売り手によし、買い手によし、そして世間よしの「三方よし」の精神で商売に勤(いそ)しむことは、神仏の教えに適うものと信じることよって、様々な困難を克服していったのでしょう。
さて、本文
物語は近江商人の家に生まれた主人公・近藤大作が大正十三年春小学校を卒業するところからはじまる。
彼は豪商・近藤商店の長男で、本人も友だちも、卒業後は八幡商業に進学するものと思っていた。
その日、大作は父親から祝いの言葉と共に、包を贈られる。中に入っていたのは30個の鍋蓋(なべぶた)だった。
彼には意味がわからない。だが、そのなんの変哲もない鍋蓋が大作の将来を決めることになる。
父親は彼にそれを売ってこいというのだ。それを売ることもできないようなら商家跡継ぎにはできないと…。
翌朝、日の出前に母親から叩き起こされた。
「人様が働きに出はってから訪ねても何にもなりまへん」と叱咤(しった)され、丁稚(でっち)の着物を着せられて送り出された。
大作の前には商いの心を、近江商人の魂を模索する辛苦に満ちた日々が待っていた。
店に出入りする者の家を回るが、親の威光を嵩(かさ)にきた押し売りのような商(あきな)いがうまくゆくはずもない。 さりとて、見知らぬ家を訪ねても、けんもほろろ、ろくに口さえきいてもらえない。
親をうらみ、買わない人々をにくむ大作…。 父が茶断ちをし、母が心で泣き、見守る周囲の人々が彼以上につらい思いをしていることに、まだ大作は気づかない。
時には甲賀売薬の行商人にならいもみ手の卑屈な演技をし、時には乞食娘をまねて、農家の老夫婦を泣き落としにかかったりもするが、しょせん、うそとまねごと。心のない商いは人々の反感を買うだけだ。 いつしか大作の目には涙が…。
一つも売れないまま3か月が過ぎた。
ある日大作は農家の井戸の洗場に鍋蓋を見つけ、これを川に流したら「この鍋蓋がなくなったら人は困って買ってくれるかもしれない」と思ったが、すぐに考えを改めた。
そしてこの鍋蓋も自分のように苦労して人が売った物と思うと、無心に洗い始めた。
不審に思った女は尋ねる、なぜ、そんなことをしているのかと。
大作は、その場に手をついて謝る。
「堪忍して下さい。わし悪いやつです。売れんかったんやないんです。物を売る気持ちもできてなかったんです。」
女は彼の涙をぬぐいながら、その鍋蓋を売ってくれというのだった。
「おばちゃん、今なに言うた?」「鍋蓋買うてやる。売って欲しい、言うたんや!」。実に感動的なシーンです。
お客の心と売り手の心がひとつになった瞬間です。
さらにまた近所の人たちにも声をかけてくれたのである。
おかげで大作の鍋蓋は売り切れ、彼は「売る者と買う者の心が通わなければ物は売れない」という商いの神髄を知るのだった。
”売ればわかる″といった父親の言葉の意味を大作は知る。
大作は父もしたようにてんびん捧に“大正13年6月某日”と鍋蓋の売れた日付を書き込み、父や母の待つ家へと帰った。
△∇△∇△∇
てんびんの詩「原点編」の中の鍋蓋売り修行の話は、びわ湖放送番組近江風土記で「近江商人3部作」の取材中、近江商人研究家故江頭恒治滋賀大学名誉教授から鍋蓋売り少年の話を聞いて以来、長年温めて来た構想を実現に導いたのは(株)イエローハット創立者役鍵山秀三郎氏でした。鍵山氏は「てんびんの詩」3部作に全面協力していただきました。
http://tenbinnouta.ciao.jp/tenbin1.html
△∇△∇△∇
その他本記事作成参考サイト
アマゾン、他
https://movie.jorudan.co.jp/film/17935/
________________________
心の履歴(99-2) 余談④;
市田の歴史
2023-08-25
https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12817574448.html
心の履歴(99-2)
近江五個荘商人市田の真髄
2023-08-17
https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12816512418.html
心の履歴:20代編 目次
https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12806473286.html
m