(前回記事)

心の履歴(281) 
もて過ぎた社員:若い娘や小母さま族に
2021-12-14 (2010/07/03 著)

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12715328021.html

 

(今回記事)

心の履歴(282) 

かっての不良少女・亜子との出会い

2021-12-15 (2010/07/04 著)

 

今回の記事は、私が採用した2名のスーパーレディの内の一人、亜子(ア子)との出会いです。

 

尚、この記事は、2020-09-13 に本ブログに掲載したのですが、記事の時系列に沿って今日の日付に書き直してあります。

 

 

私がその亜子と出会ったのが彼女が19歳の時でした。

 

その亜子(ア子)は、実は中学時代から札幌の繁華街・すすきのの夜の街でたむろする不良少女だったのです。


1987年初秋
 
本社人事部に来春の新卒の配属を何名か要請するも無理との事。大卒男子120名の採用予定に対して、未だ70数名しか内定を出せていないという。本州ではバブルなのです。


『来春の新卒採用数が足りないから、中途採用で人手を確保せよ』との全国通達。
 
期していた女子営業社員募集を就職誌でかけました。
同時に、女子アルバイト・営業アシスタント募集。
納品立会いで作業無し。
 
この募集をかけている間、本社から再度全国通達。
『男子営業社員を中途採用でも確保困難なら女子を採用せよ』

おあつらえ向き。

然し、この時は女子からの問い合わせや履歴書郵送は一つもありませんでした。

 

それから数か月後の秋、女性から電話がかかってきました。

「以前アルバイト募集の広告を見たのですが、未だ募集をしていますか?」と。

 

面接日は月末の伝票処理で社員がほぼ全員在社の時。

コンコンと階段を上ってカウンターにやってきた一人の女性。
「面接に来ました亜子(あこ・仮称)と申します」
 
事務員の由紀さんが私に言いに来ました。
「所長、面接の方がいらっしゃいました。応接室に案内します」
「おゝ、そうしてくれ。お茶を出しておいてね」
 
応接室は事務所の奥にあります。
由紀さんの案内で彼女は事務所の真ん中を進みます。

ちょっと離れた所から見ている私。

 


 
真っ赤なスーツ。

超ミニ。
真っ赤な口紅。
 
描いたまゆ毛。
濃いアイライン。

張り裂けんばかりの大きな胸。
ふくよかなボデー。
 
高い高いハイヒール。
あれでは背は150cmも無い。
 
ハイヒールの靴底の鋲(びょう)が木造の床を打つ。
彼女の歩む都度「コツ、コツ、コツ」と。
 
事務所の全員が唖然。
「来る所を間違えたのじゃないの?」
「安物バーのホステス?」
 
10分程待たせてから応接室に入りました。
彼女の差し出した履歴書入りの封筒は開封せず、そのままテーブルの端に置きました。
 
ありきたりの挨拶言葉を交わす。
どう若く見ても30歳弱。
 
濃い化粧。
くたびれた顔の皮膚。

 

処が、彼女のひょいと私を見上げる瞳。
赤坂の超やり手の女性(註)のあの瞳と瓜二つにギョギョ!

 

(註)

赤坂でミス・ユニバースやミス・ワールドを育成・輩出していた一種のプロダクションの35歳前後の経営者。

 

履歴書(27) 赤坂での取引;色仕掛け等何のその
2021-11-26 

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12712303574.html

 

生きた瞳の持ち主が、今、目の前に。
更にツタンカーメンのような黒いアイラインの奥にキラリ。
 


「君は幼少の頃、神童と言われた事があったでしょう」
「何故それが分かるのですか」


「君の瞳の奥の光だよ。凡人の光ではない」
「子供の頃、親戚の人たちによくそう言われましたわ」
 
「どんな仕事をしていたのかね?」
「アルバイトでコンパニオンです。だからコンパニオン用のこの紅いスーツしかまともな服は持っていないのです。恥ずかしいですが」
 
「それがどうしてまた」
「このままでは私、駄目になる。立ち直ろうと思いまして」
 
「彼氏はいるのかい?」
「昔いましたが今はいません」
 
「然し、君の胸は大きいね」
「母親譲りですから」
 
「その胸に合うブラジャーって売っているの?」
「デパートで探すのが大変です」

 

「そうだろうな。うちの女房に見せてあげたいよ」
「奥さん、普通なのですか?」
 
「普通ならいいが年齢に反比例して年々萎(しぼ)んできたよ」
「羨(うら)やましいですね、奥さん。私、肩が凝って肩が凝って! それに私、顔も身体全体も腫(は)れていると思いません?」
 
「そうかい? 私には分からないが」
「私、肝臓が悪いのです」
 
「どうして悪いの?」
「アルコールです。ドクターストップがかかっていて。だから身体全体がむくんでいるのです。顔もむくんでいるでしょう」
 
「体調は?」
「お酒さえ飲まなければ迷惑をかけることは無いと思います」
 
「両親は何をしているの?」
「小さな町工場を経営しております」
 
「兄弟は?」
「二つ上の兄が一人。今大学生です」
 
「どこの大学?」
「室蘭工業大学です」
 
「あの国立二期校のかい?」
「そうです」
 
「あそこは結構難しいんだよ」
私はその兄は30歳に近い大学院生と思いました。
 
「よし、分かった! 君を採用しよう。

但しアルバイトではなく、正社員でだ!」
「エェッ? それは困ります」
 
「君は、超一流セールス・ウーマンになれる素質がある!」
「正社員なんて絶対困ります」
 
「どうして?」
「とにかく私の履歴書を見て下さい」

 

つづく

心の履歴(283) 
亜子との秘密の約束
2021-12-15 (2010/07/05 著)

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12715421563.html
 

 

『心の履歴』40代北海道編1⃣ 目次
(自) No.241 1987年1月~

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12712060251.html