ブログネタ:最近後悔したこと 参加中
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【入院中の話し】
麻酔の担当医、眼鏡っ子(D75)と“おトモダチ”になった。
聞けば、全身麻酔は後遺症が酷いそうだ。
吐き気と頭痛、幻覚、幻聴を見聞きする患者も多いらしい。
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私は、
2月3日に手術をした。
何の手術かは言いたくないが、全身麻酔で開腹。
その後、全麻の後遺症にえらく苦しんだ。
まず自分は、幻覚症状が酷かった。
妙な夢を見て、夢の中で魘されて起きる夜を三日間繰り返した。
まともに眠れなかった。
夢の内容としては様々だったが、とても印象に残っている夢が2つある。
①白侶に捨てられる夢
冗談じゃないんだけどッ
何お前!!
なんで俺がお前に捨てられなきゃなんないわけ!!
意味解んないんだけど、ふざけてるのッ?!
白侶にしてみれば、理不尽極まりない話しだ。
はじめ、彼はどうして自分が怒れているのか理解出来なかっただろう。
・・・・・夢というか、起きている間も見え続ける幻。
『幻覚』
実際、その場に白侶は居ないのに、私の目の前には然もいるかの様に映る見馴れた長身痩躯。
姿は、いつもの白侶。
少し長めの後髪を簡潔に束ね、質素というより品の良い白磁色の着物を身に纏って。
表情筋を一切使っていないのではないかと疑いたくなるくらい、普段から微動だにしない彼の無表情も、健在。
ただ一つ、違ったのは─────
【距離】
幻は、白侶なら絶対に立たない位置に立っていた。
・・・・・・3メートル
普段、何かあった時の事を踏まえ、白侶なら私を必ず自分の手の届く範囲に置く。
必要以上に距離を取ることは、絶対に無い。
「それが解っていながら、何故くだらぬ“幻影”に惑わされたのですか..」
聞いているのかいないのかハッキリしない語り口調は、白侶の癖。
ゆったりとして眠くなりそうな、低い、砂嵐の混じるノイズ音。
よほど彼を見馴れた人間以外、気付かぬような変化がそこにはあった。
「わかんない」
そう答えると、影が射し、少し怒っているように見える鉄面皮は────
「それで? その“幻”とやらは何と..」
と、私に幻覚の症状について、説明の続きを促した。
『お 疲 れ 様 で し た』
────声も口調も、姿も顔も、全部・・・白侶だった。
瞬間的に、私はとんでもない絶望感を味わった。
気が付いたら思いきり、此れでもかと言うほどに、目の前の顔をぶっ叩いてた。
その時聞いた“カシャン!”という音が、今も耳に残っている。
一発では殴り足りなくて、まだ手を振り回していた私は、両腕を誰かに捕まれてやっと捕縛された。
それでも勢いは消えなくて、前のめりになって私はへたり込んだが。
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人には、【過去世(前世)】と言うものがある。
覚えている人間はほんの一部だが、過去からの記憶を消すことなく引き続き持っている人間も中にはいる。
斯くいう、私がそうだ。
1200年間、記憶が消えること無く続いているため、まともに“死んだ”という実感が得られない。
これは「苦」だ。
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・・・だが然し・・・
かつて、あれほどの絶望を味わった事があっただろうか?
私の腕を止めたのは────
結局、その時付き添いで病室にいた白侶だった。
実際のところ、彼は私の目の前に居たのではないが。
実際には、いつもの定位置。
彼は、私の左斜め後ろ【2歩の距離】にいた。
“カシャン!”という音は、白侶が掛けていた眼鏡が壁に吹っ飛び、ぶつかった音だった。
振り回した私の左腕が、ちょうど彼の顔を掠めたらしい。
無意識だったとはいえ、点滴の付いた右腕を振り回さなかったのは奇跡だった。
・・・それにしても、人間は怒りでも泣けるらしい。
大きな掌に目元を覆われて、やっと最低な“幻”から解放された気がした。
醜態を晒しながら、私はグズグズとその場に崩れ落ちた。
主人がそこらに体を打つけぬよう、白侶は庇いながら膝をつく。
子供をあやす様に、ゆっくりと撫でられた頭。
いまだ涙の止まらない目元は隠したまま、
「ゆっくり深呼吸して・・・」
耳元で、宥めるように囁かれた聞き慣れた声。
何にそんなに怯えているのですか..
一瞬底意地が悪く聞こえたのは、彼の腹黒スキルのせいだろうか・・・
それとも、薬の副作用で体温調整が上手くいかず、自分は震えてでもいたのだろうか?
まあ、どちらにせよ。
質問には答えられなかった。
と言うより、
あまりにバカな質問に、幻も何も吹き飛んでしまった。
────事の顛末と弁明を求められたのは、その後だ。
目の前で、
白侶が『今までお疲れ様でした』みたいな事を言うからついカッとなってひっ叩いた、と説明した。
「そんな物が自分であって堪るものか」
説明を聞いた白侶さんは“おこ”であった。
激・“おこ”である。
この男には珍しいくらい、それはもう“ぷんすこ”していた。
普段と変わりないように見えて、徐々に変わっていくその無表情。
よく見なければ解らない変化ではあるが、28年という長い付き合いの自分にだけ解る、白侶の眉間のシワの数。
それに対し、いい歳こいて「だってムカついたんだもん!」発言な御主人様。
弁明というか言い訳というか・・・
もはや年甲斐もなく『でも』『だって』を駆使w
しかし、鬼小姓の無慈悲な「聞こえない」の一言の前に敢えなく轟沈。
・・・言っておくが、私の声が小さいのではない。
お前が聞く耳持たずなんだ、バカッ!!!
喧しい、バカは貴方です..
初めから、言い訳など聞く気のない鬼チクショウー。
今も、その愚かな贋物は見えるのですか?
お前の顔しか見えないわ!!
左様で..
・・・・・わざわざ目の前に来るあたり根性が悪い。
性根がひん曲がっているとしか思えない!
「この距離なら区別も付くでしょう?w」と言いたいのでだろう満面の笑み
────夢でも幻でも現実でも、結局、白侶は白侶だった。
あの鬼小姓、まぢ鬼畜
同じ眼鏡でもDカップちゃんとは全っ然違うでやんの!
最近後悔したこと・・・・・・
眼鏡属性が優しいと言うのは、都市伝説だった