比翼連理 ~執事の愛が重い件~

比翼連理 ~執事の愛が重い件~

当ブログは、年の差11歳の主従が送る日常の風景。ネグレクトの母から赤子の私を引き取り育ててくれた付き人の白侶(ハクロ)は、その美貌と優雅さで見る者を虜にする外面の良い悪魔。そんな彼のドス黒い“本性”を主人ならではの目線で書き綴るノンフィクションです。

※注意事項※
当ブログは、自分と世話役のイメージに一番近い人物像として『黒執事Ⅱ』のアロイスとクロードの画像をお借りしています。
ぶっちゃけ、「ネタ?」くらいに思って読んで頂ければ幸いです。


聖は死ぬ間際

私に『生きろ』と言った


私は今世でもその言葉を守り

彼の遺言に従い
何があっても生き抜いてきた

..本当に、何があっても



私は今世、ほんとうは
聖と生きたかった

それは叶わなかったが


22歳の時
高野山の奥の院で聖と話した

まるで中学生の初デートかよと
思うほど緊張した
 空海様から与えられた時間は
短かったが
400年ぶりに呼吸したような
心地よい気分だった


昔と変わらぬ穏やかな話し方
柔和な笑顔
言葉の足らない腹の立つ性格も
何一つ変わらない

最愛の友


なぜ転生しなかったと
責めた私に

「共に生きる方法は1つじゃない」

と言った


聖の言葉は回りくどい

けれどいつだって
私の胸には
その真意が染み込んでくる


私は自分に呪いをかけた結果
幾度も転生を繰り返し
その度に記憶を引き継ぐ生成りだ

聖は普通の人間
私に付き合って
記憶を引き継ぐことは出来ない

だから聖は
転生の輪に入らなかった

「私は転ずれば貴女を忘れてしまう」
「共に生きようと言ったろう」


あの時の笑顔だけで
私は人生を
完遂したような気分だった

同じ空の下で繋がっていれば
いつだって
心は共に生きている」


クローバークローバークローバークローバークローバー

現代の言葉で言うなら
聖は私の“推し”なのだ

クローバークローバークローバークローバークローバー



白侶はいい顔しないけど..


白侶が聖を毛嫌いするのは

私が安易に
『穏やかな死』を受け入れるからだ

聖と人の一生分を

共に生きることは出来るだろう

ただ、その後が無い


魂のヒビを修復できない私に

待っているのは

『消滅』


白侶はそれが気に入らないのだ




もう1つの理由は

この手で兄を殺し
白露を裏切り
屋敷を出奔したあとに出会った

僧侶と巡り逢わんがため


ああ、俺は本当に白侶のことなど微塵も顧みない



結果として

あのお人好しのクソ坊主もとい
高野聖(コウヤヒジリ)・蓮章は
転生していなかったけど..

聖も転生しているものとばかり
思っていた当時の私は
師の霊視結果に
心底ガッカリしたものだ

けれど


彼は転生していない。

今は高野山で
空海様に食事を運ぶ
修行の日々を送っている


師のその言葉に
胸も涙もいっぱいで

半年かけて準備をし


逢いに行った


今世の自分の全てを
肩書きも地位もプライドも
まさに
かなぐり捨てた行動だった


クローバークローバークローバークローバークローバー


師匠からは再三反対された

私の魂には
ヒビが入っているそうだ


始祖・御門影正の生きた
1200年前
時の帝と朝廷を呪うため
自分に施した呪がもとで
魂が崩れかけている

もう一度転生すれば
粉々に砕けるだろう

そう言われてた



師匠には見抜かれていた

私がもう

滅びたがっていることを


だから当時

何度も何度も説得された


「今のあなたには親がある」

「彼は添い遂げられる伴侶ではないし
生者と死者
これ以上
互いにどんな変化も齎さない」


聖と生きるということは
私にとって
『穏やかな死』を意味する

魂的な意味だ

肉体は天寿を全うするとしても
その魂は
修復することが出来ないので
最期は砕け散る

二度とこの世に現れる事はない
本当の『消滅』



けれど当時の私は

壊れかけた魂を修復するよりも
塵となって風と成って
聖の頬を撫ぜている方が
幸せに思えた


クローバークローバークローバークローバークローバー



聖は
私の『救い』なんだ


400年前、兄を刺し殺し
汚れた体を持て余して
死のうとしていた私に

彼はただ一言

『来るか?』
と手を差し伸べてくれた

霊能力のせいで
化け物扱いされていた自分にとって
母以外の人間から受けた
初めての温かい心


それから聖が亡くなるまでの
2年の間に
彼からもらったモノは
あまりに多く
たとえ貧しくとも心豊かで
温かく
それまでに転じてきた
どの人生の中でも
最も幸せな生を与えてくれた


私に『穏やかな死』を
齎すのが聖なら
私にとって
それは『救い』だ

私を救える者がいるのなら
それは

聖以外にいないのだ




クローバークローバークローバークローバークローバー



聖が『穏やかな死』なら
白侶はまるで『熾烈な生』だ

仏の化身のような聖と

無表情で無機質で
死の化身のような白侶

それなのに

齎される結果は逆という



クローバークローバークローバークローバークローバー




いやさ何とも不憫な話しである..

私が前世も今世も女なら
何も問題なかったし
独身だったら
なおさらハッピーエンドで
終わった話だったのに

都合の良い現実など無いのだ



今世

私は白侶にまったく関係ない
2つの理由で
「男」として転生した

1つは、前世の兄に会うため
1つは、最愛の友と生きるため

そこに白侶への配慮は
まったく無い


今生で師匠に出会うまで
私は兄に対して
自分が殺してしまったことへの
呵責の念を抱いていた

あの人に女として見られぬよう
同じ男同士なら
うまくやっていけるかも知れない。

血は繋がっていなくとも
兄弟としてまたやり直したい。

私の前世(みつ)はそう思い
今の性に転じたのだと言われた


「お前は悪くない」
「俺が悪かった」

信也にそう言われて
和解して
やっと胸のつかえが取れるまで
24年かかった