美幸 4 | 風の痛み  Another Tale Of Minako
4.お父さん

お父さん、わたし、ずっと待ってたんだよ。お父さんが迎えに来てくれるの。
お母さんは、お父さんは、お仕事で遠くに行っちゃったから、帰ってくるまで家にいようねって…。
お母さんもおばあちゃんもおじいちゃんも優しかったけど…。
お家も広かったけど…。
お風呂もきれいだったけど…。
でも、わたしはお父さんとあのアパートにいるほうがよかった。

6年生のとき、一度、内緒でアパートに帰ったんだ。
でも、そこはもう違う人が住んでた。
遠くに行っちゃったからアパートにはいないって言われてたんだけど…。
アパートの前でわたしが泣いてると、下の階の玉川のおばちゃんが来たの。
「美幸ちゃんどうしたの?」って…。
わたし、おばちゃんにお父さんどこに行ったの?って訊いたわ。
おばちゃん困ったような顔をして、わたしを部屋に入れてくれた。
お母さんは何も言ってくれないのかって訊かれて、わたしが、うんって言うと、何か封筒のようなものを探してきて、紙に住所を書いてくれた。
そこに行ってごらんって。
お父さん、ここにいるの?って訊いたら、おばちゃん、何も言わないで泣いてた。
わたしは家に帰って、学校で使ってる地図帳でそこを探したの。
遠かった。
わたしには行けない。

中学になって、お小遣いを貯めて、内緒でそこに行ったわ。
友達の家に泊まるからって嘘ついて…。
そこは西村さんっていうお家。
お父さんの妹さんの家だった。
そのおばさんが、みんな教えてくれた。
お父さん、死んだんだって…
わたしをお母さんのところへやって、自殺したんだって…
癌だったんだって…

わたし、お父さんに捨てられたと思ってた。
わたしがお母さんからのプレゼントを嬉しそうに着てるので、お父さん、わたしがお母さんと暮らしたいと思ってるって勘違いしたんだと思って、ずっと後悔してた。
お母さんになんか会わなければよかったって…。
どうしてプレゼントなんか持ってきたのよってお母さんも恨んだわ。
ずーっとそう思って、お父さんもお母さんも恨んでた。
ごめんね。