3.別れ
「お母さん、あれに乗ろう」
遊園地のコーヒーカップに向って美幸はお母さんの手を引っ張った。
「お父さんも、早く」
わたしが振り返るとお父さんがいない。
「あれ、お父さんは?」
お母さんは笑っているだけで何も言わない。
「お父さんはどこ?」
はっと、目が覚めた。
隣の部屋の電気がついていた。
隣と言ってもカーテンで仕切っただけだ。
お父さんは、机に向って何か書いていた。
翌朝、いつもならわたしといっしょに出かけるお父さんが、玄関でわたしを見送った。
「美幸、お母さんに会ったら、この手紙を渡してくれるか?」
そう言って、お父さんは茶色い封筒を美幸に見せてそれをランドセルに入れた。
「帰りはどうするの?お父さんが迎えに来てくれるの?」
「うん?そうだね。お母さんと話すよ。遅れるといけない。さぁ、行っといで」
お父さんに背中を押されてわたしは家を出た。
まっすぐ歩いてわたしは、振り返った。
驚いたことにお父さんが、外に出てずっとわたしを見ていた。
わたしが立ち止まってじっとお父さんのほうを見ていると、お父さんは手を振った。
わたしも手を振ってまた歩き出した。
角を曲がる手前でもう一度振り返った。
お父さんはもういなかった。
「美幸ちゃん、おはよう」
香織に会った。
「おはよう」
お父さんのことがなんとなく気になったが、香織といっしょに学校に向った。