日曜日。家の前の掃き掃除をしていたら、お向かいのMさんもホウキを持って出てきて、しばらく立ち話をしてしまった。
冬にお隣さんが引っ越してしまい、そのまたお隣も、今お引っ越し中。
「なんだかすぐ売れちゃったみたいよ」とMさん。
「へえ~! じゃ、新しい人が越してくるんだ」
「いやいや、もう古くてダメって言ってた。雨漏りもするし、トイレがほら、ひとつのドアに男の人用のトイレがついてる旧式のだって。だから、建て売りができるんじゃないの?」
「へぇ~」
「でも売れたからよかったわねぇ。ウチなんか、私が死んだら売ると思うけど、売れるのかしら」
「何を言うんですか。お家だってお手入れされてるから全然きれいじゃないですか。それにまだまだバリバリお元気じゃないですか!」
Mさんはお掃除魔、メンテナンス魔なので、本当にこまめに家を手入れしているのだ。
「まぁきれいはきれいだけどねぇ。でもいつまで生きるかわからないしね。もうこんな状態で生きていても」
ときどき、「あんまり長生きするもんじゃないわ病」が出てきてしまうMさん。
「ほら、今日の新聞に出てたでしょ。介護殺人」
「え、まだ今日の新聞読んでないんで」
隣の市の80代の夫婦らしい。夫が妻を刺したと。
「認知症だって」
「あ~、認知症がある場合は家で介護するのは無理ですよね……」
Mさんは足が余り状態がよくない。けれど、歩けることは歩ける。だから、少し自分の愚痴みたいなことを言ってしまったあと、ウチの夫がまったく歩けないことに気づいて、必ず、今度は私のことを考えてくださるようなのだ。それで、まぁ、介護殺人の話がでてきたのでしょうネ。
立ち話をしたあともしばらく家の周りを掃いていると、またMさんが出てきた。
「これ食べて」高級ラスクをくださる。いつもいつもいろいろおいしいものをもらいっぱなし。
家に入ってダンナに「ラスクもらった」と言うと、「ダンナさんの介護大変だねぇ、って気づかってくれるんだよ」って。ありがたい。
ふと気づいて、新聞をめくってみたら。
介護に疲れた夫が、認知症の妻を殺したのではなくて。
認知症の夫が、介護する妻を殺したという話だった!
夫は容疑を認めている、と書いてあったけど、認知症で、容疑を認めることができるのか?



