私生き方を変えた本『ゼロ・ウェイスト・ホーム』 | Minahei

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ライター戸塚美奈のブログです。

『打ちのめされるほどすごい本』。これは米原万里さんの最後の書評集。なんて素敵なタイトルと唸ったものだ。そんなふうに、私も打ちのめされた本を紹介したい……とはいっても私の場合、かなわんと打ちのめされるほどの才もないので、ただただ感心して影響されるのみである。

しばらくブログを書けなかった理由のひとつが、この本だ。『ゼロ・ウェイスト・ホーム』。もちろん、「打ちのめされて」書けなかったのではなく、あまりにも影響されすぎて、リアルライフが忙しくなったから。著者は、ベア・ジョンソンさんという、カリフォルニアに住む主婦。フランス人だ。もともと、ベアさんは愛する夫、息子二人と、ハリウッド映画で観るような、消費生活を謳歌するゴージャスなアメリカ人の暮らしをしていたらしい。ところが、あるとき、物を減らし、小さな家に引っ越し、シンプルライフへ移行。その過程で、人間の営みが地球環境を破壊しているという映像を観てショックを受け、猛勉強。以来、環境負荷がかかるプラスチックなど化学製品を使うことをやめ、ごみを減らす暮らしにチャレンジ。そしてついに、4人家族が1年に出すゴミは、ガラス瓶1つ分だけに! 本は世界中で翻訳されている。環境大賞に選ばれて、受け取ったトロフィーを、数日後に送り返したというエピソードも面白い。わたしには素晴らしい思い出がある、しかもトロフィーにたまるホコリをはたく必要もないんです!とベアさん。

 

この本には、いかにしてゴミを出さずに暮らすか、ゴミを出さないということがどれほど暮らしを豊かにするか、ベアさんの飽くなきチャレンジがあますところなく書かれている。

大きなポイントは、リフューズ(断る)、リデュース(減らす)、リユース(繰り返し使う)、リサイクル(資源化)、ロット(たい肥化)の5つのR。不必要なものは断り、必要なものを最小限にする。使い捨てをやめて繰り返し使う。ゴミにせず、資源として再利用させる。土に返るものはコンポストに。買い物に行くときは、ガラス瓶を持参し、包装紙やビニール袋はリフューズする。ティッシュは使わず、古いTシャツのはぎれをハンカチーフにして、それを何度も使う。土に返るごみはすべてコンポストに。洋服はすべてリサイクルショップでまかない、新品は買わない。

それはケチで面倒な生活なのかというとさにあらず。ゴミを減らすことで、生活がますますシンプルになり、やりたいことをやる時間ができ、健康的になり、しかも、お金もかからない!


愉快なのは、ベアさんが、自分のライフスタイルを語るにとどまらず、読者に行動を起こし、声を上げようと呼びかけてもいること。本の帯には、「あなたひとりではじめられる、ささやかで楽しい革命です」とある。「時にちょっと過激とも思えるような取り組みの数々を、誰に頼まれたわけでもなく嬉々として実践し、信念に向かって一直線に突き進む揺るぎない姿勢」(訳者あとがきより、ちなみに、翻訳も見事である) まさにそのとおり! ベアさんのポジティブさがこの本の大きな魅力だ。

 

まずは段階的に物を整理して、減らすことが大事。断捨離に似ているけれど、断捨離とはまったく違う。この本を読んだときに、「あっ!だから、私は断捨離ってどこか変だと思っていたんだ!!」と叫んでしまった。断捨離は、どんどん捨てましょう、捨てて循環させましょう、というライフスタイル。ゴミがどこへ行くのかについては関知しない。断捨離本はだいぶ読んだが、コソコソといらないものを処分しながらも、ゴミを大量に出すことへの後ろめたさや、ボロを捨ててさっさと新品を買うこと、キッチンタオル等をためらいなく使うことへの疑問がずっと消せなかった。それが、この本を読んで、すべて、解消。そうだ、ゴミを出さない、という考え方をすればいいわけだ!! 

 

通常、アメリカ発のライフスタイル本というと、いまひとつ現実味に欠ける部分があるのだけれど、ベアさんのトライ&エラーはすべて実際になされたことで、誰でもすぐ試してみようと思える例がたくさんあり実用的(ココアパウダーをチークにすることは私はマネしていないけれど)。フランス人らしい、ヨーロッパ風ケチ精神とエレガンス、カリフォルニアの太陽のような明るさにあふれ、エコロジーの本なのに辛気臭いところがまるでない。

 

日本ではこれまで、エコロジーについて考え行動することは、一般的ではなかった。どちらかというと経済発展を妨げるメンドクサイ人たちの行い、のような目で見られる傾向があったと思う。それではいけないのだ! ウエイク・アップ! ようやく日本でも、最近少しずつ、プラスチックゴミの話題がニュースになるようになった。今こそ、もっと読まれるべき本だと思う。

 

この本を読んで私がどれだけ変わったかは次回に。