これは広瀬隆さんの――八重洲ブックセンター本店での講演(1)です。
大事故目前!川内原発での「死の行進」
8月28日に、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』の出版記念講演会を、東京駅前の八重洲ブックセンターでおこないました。1時間しか話せなかったので、話せなかったことも含めて、その内容をご報告します。
この日の演題は、「川内原発は、ほどなく大事故を起こす!!」です。
8月上旬に、川内原発の再稼働を阻止するため、実数2000人以上の人が、トテツモナイ猛暑のなかで「川内原発前の海岸」に集まって大集会を開いた時、そこにテントを張ってレジスタンスを続けていた人が集まりました。
このテントのすぐ背後の山のかげに、今にも制御棒を引き抜いて動かそうとしていた原発が2基あるのです。
この参加者の人数は、大都会における国会前デモの参加者とは、比較にならないほど大きなものです。ド田舎での出来事ですから。
去年の9月にこの命懸けのテントを張ったのは、東京で経産省前にテントを張った偉い人たちですが、現在は、驚くべきことに40以上ものテントが立ち並んでいました。
つまり「川内原発を絶対に止める! たとえ九州電力が一時的に動かしても、それを止める」という強い意志を持った人たちが、8月9日に大集会を開き、そのあと原発ゲート前まで、私も猛暑で倒れそうになりながら「死の行進」のデモをしたということです。
なぜかって?
それは大事故が目前だからです。
鹿児島県が、福島県と同じようになる直前にあるからです。
翌10日の川内原発ゲート前の集会では、私もスピーチをしろと言われて、そこで話したのは、そのことです。
「明日にも制御棒を引き抜いて、川内原発を再稼働させようとしていますが、コントロールルームの内部で働いている九州電力の職員は、内心でこわくてならないのです。彼らは、われわれより危険性を知っています。つまり、自分たちの点検が充分ではないことを知っている。彼らは決して悪意があるわけではないが、大事故が起こらないように、心の中で祈っているだけなのです」と。
何千、何万とある部品と機器を組み合わせた巨大な装置が、原子力発電所である。4年3ヵ月も運転を止めていたのだから、必ず、大事故を起こす。塩分が飛び交う海岸線にあって、金属材料の腐食が、最もこわいのだ。
私は若い頃、大企業で金属の腐食について研究していた人間なので、それがよく分ります。必死になって検査をしても、パーツごとのバラバラ検査では、運転中に発生する事故は、まったく予測できない。制御棒を抜いて、高温・高圧で運転して初めて、真のトラブルが分る。だから、「すぐにトラブルが起こる」と、みなに断言しました。
「内部で危険なことがあっても、九州電力は隠す。それが原発のおそろしいところである。つまり、再稼働によって、その恐怖の生体実験にかけられているのが、われわれである」と。
しかし、ドシロウトの安倍晋三と麻生太郎は、九州電力社長・瓜生道明に対して「何としても再稼働しろ」と圧力をかけている。経営危機にある瓜生社長は、川内原発の所長に対して「何としても再稼働しろ」との命令を伝えている。こうして強引に、再稼働されてしまったのだ。だから、大事故は目前である。
最もおそろしい
桜島大噴火のトテツモナイ現況
川内原発での大事故のシナリオは、具体的には、こうです。新聞を読んでいると、1万年単位で起こる巨大なカルデラ噴火のことばかり警告しているが、私がおそれているのは、そのような溶岩流ではなく、普通の大噴火である。
大量の火山灰が降りつもっただけで、電源喪失が起こり、フクシマ原発事故と同じ、悲惨な経過をたどるのである。
つまり、川内原発から至近距離にある桜島の噴火が、2010年から毎年1000回以上も噴火している。
一年は365日なので、毎日平均3回という異常な状態にある。
去年(2014年)だけ噴火回数が半分に減ったが、逆に噴火の規模は、一昨年より大きくなっているのだ。それを警告する現実の出来事が、最近2回あった。
第一は、川内原発再稼働直後に起こった「桜島の山体膨張」である。
つまり地底から上がってくるマグマがどんどん増えて、桜島が太った。まぎれもなく大噴火の予兆である。
そのため住民に避難勧告が出され、これはのちに解除されたが、マグマが消えたわけではない。いつでも大噴火する可能性を秘めた無気味な状態を今も続けている。
新燃岳《しんもえだけ》の大噴火で流れた火山灰
第二は、東日本大震災によってフクシマ原発事故が起こる直前、2011年1月26日に起こった霧島連山の新燃岳《しんもえだけ》の大噴火である。
あの時、大量の火山灰は、NASAが撮影したように、幸いにも川内原発と反対側の、宮崎県の方向に流れた。
もし逆方向に、西に向かう風であれば、川内原発がどうなっていたか分らない。
この「桜島」と「霧島連山」の噴火は、連動しているのである。ちょうど100年前の1914年1月に起こった桜島大正大噴火の時に、霧島連山・御鉢火口が噴火した4日後から桜島大噴火が始まり、直後にマグニチュード7.1という桜島大地震が起こったのだ。
それは、トテツモナイ巨大噴火と地震だったが、当時は川内原発が存在しなかった。そして、鹿児島県の南にある口永良部島《くちのえらぶじま》も、今年5月に大噴火しているではないか。
こういう危険性を何も知らない火山のドシロウトが、原子力規制委員会の田中俊一委員長なのだ。
大地震である。 活発な火山に囲まれた川内原発を、大地震と大噴火が襲う日は、刻々と、目前に迫っている。では、大地震が起こった時に、川内原発のどこが破壊されやすいかを説明しよう。
川内原発・伊方原発・高浜原発・玄海原発など、再稼働の対象になってきた加圧水型原発(PWR)の危険性について、私が最もおそれている、メルトダウン事故のトリガー(引き金)になると考えられるのは、蒸気発生器の細管の連鎖的なギロチン破断である。
蒸気発生器とは、この加圧水型の原発だけにある巨大装置であり、原子炉より大きい。福島第一原発のような沸騰水型(BWR)では、名前の通り、原子炉の水が沸騰するが、加圧水型は名前の通り、大きな圧力を加えて、原子炉の中で水を沸騰させないようにしている。
では、タービンと発電機に送る水蒸気は、どこでつくるのか、というと、左側の原子炉圧力容器で生まれた熱水が、赤い矢印のように流れて、蒸気発生器に入り、そこで熱交換して蒸気をつくる。
その蒸気発生器の部分を拡大すると、20メートル以上の高さ(つまり2メートルの巨人が10人分)もある装置で、内部には、半分あたりから下のほうに、細いパイプ(U字管を逆さにしたもの)がぎっしりつまっているのが見える。
そのうち一本の細いパイプをさらに拡大すると、原子炉からきた高温の熱水(赤色の部分)がパイプの中を流れ、その外側に薄水色で示した水が流れている。そして、外側の水が熱を受けて沸騰する。
もし大地震が来て、この細管が破断すれば、どうなるか。
勿論、原子炉の熱水がどっと噴出する。原子炉の運転条件は、フクシマ・タイプの沸騰水型では280~290℃で、70気圧だが、加圧水型では290~330℃と高温で、しかも圧力が、2倍以上の150気圧もある。
このように沸騰水型に比べて、加圧水型は温度も圧力も高い状態で運転されている。配管破損による事故では、冷却水の噴出は、高温・高圧の分だけ激しくなり、メルトダウンに至る速度は加圧水型で格段に早くなる。
フクシマ原発事故では、ほぼ4時間後にメルトダウンが始まったと見られているが、田中三彦さんとの対談で語られたように、「加圧水型原発では、わずか22分でメルトダウンが起こる」という恐怖の事実は、それが原因なのである。まさに一瞬で、大事故に突入するのだ。
そのメルトダウンを引き起こす、この蒸気発生器の細管破断事故が、実際に日本で起こっているのだ。
1991年2月9日に、関西電力の福井県・美浜原発2号機で蒸気発生器のギロチン破断事故が起こったのだ。
あの時には、沸騰してはならない原子炉の水が沸騰し始め、原子炉の上の部分の水が失われ始めた。しかし、フクシマ原発事故と同じように、メルトダウンに突入しようとする寸前で、かろうじてそれを食い止めた。
この大事故で明らかになったのは、蒸気発生器の細管は、絶えず破損している、という事実であった。その破損パイプを、定期検査の時に見つけては、栓をして、文字通り、綱渡りで使っていたのだ。
現在も、そうなのである!
なぜなら、今回、再稼働にとりかかった川内原発1号機では、直径21ミリ、厚さ1.3ミリしかない紙のように薄いインコネル(ニッケル・クロム・鉄の合金)製の金属管である。
なぜ、そんなに薄い金属を使うのか?
なぜ、厚い頑丈なパイプにしないのか?
それは、熱交換機だから、薄くないと、相手側の水に熱を伝えられないからである。1台の蒸気発生器には、その頼りないパイプがほぼ3400本も走っている。川内原発には、蒸気発生器が3台あるので、合計1万1000本を超えるのだから、絶えず破損が起こっているのだ。
1本でも破断すれば、連鎖的に破断し、炉心から水が失われ、たちまち大事故を引き起こす。
なぜかって?
いいですか、150気圧の水が噴出すると、それは、水というより、鉄砲玉のような破壊力を持ったものだからだ。
相手側の水との差圧を考えても、おそらく100気圧ぐらいの力である。
その爆発的な噴出力を持った鉄砲玉が飛んできて、隣の細管が破損しないだろうか? それが、イギリスで起こったのである。
ソ連でチェルノブイリ原発事故が起こった翌年、1987年2月、イギリスの高速増殖炉ドーンレイPFRの蒸気発生器細管のギロチン破断事故が起こった。
その時、10秒にも満たない短時間に、40本の細管がダダダダッと連鎖的に破断し、70本が損傷した。
しかもこの重大事故は、しばらく隠されていたのだ。
次回は、アメリカのカリフォルニア州のサンオノフレ原発で、蒸気発生器の細管が破損したため、原子炉が緊急停止し、放射性物質が大気中に漏れた事件を紹介する。
http://diamond.jp/articles/-/78686?page=5