テレビに政権があられもなく介入した国の末路 | 21世紀のケインジアンのブログ

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私が良識派のジャーナリストの一人として大変尊敬している金平茂紀さんが、昨今の日本のメディアの状況を憂慮しておられる。過去に旧ソ連時代、御用放送しかなかったモスクワに勤務された経験と昨今の日本のメディアの状況を比較されて、旧ソ連のようになりつつあると。放送法を盾に、政権党が個別番組の内容に絡んでテレビ局幹部を呼びつけ「事情聴取」した。僕は、ああ僕らの国はあのソ連時代に向かっているのかと思った。とおっしゃる。私は、その日本のメディアに危機感がないことが恐い。

日本では、新聞とテレビの系列がある。フジテレビー産経新聞、日本テレビー読売新聞、テレビ東京―日経新聞、TBS-毎日新聞、テレビ朝日―朝日新聞だ。産経・読売は安倍応援団。日経は政権寄り。リベラルなのは朝日、毎日。しかし、朝日は新聞が慰安婦報道などでバッシングを受けテレビが古賀問題で自民党に呼びつけられシュリンクしつつある。残るのはTBS-毎日新聞ラインだ。

TBSは以前は「報道のTBS」といわれたが、いろいろな不祥事もあり、昔日の感はない。そのTBSの中で残った数少ない硬派の番組が金平さんがキャスターをされている「報道特集」(土曜日、午後5時30分~)だ。金平さんはいつも、「視聴率はいらない」とおっしゃっておられる。そんな金平さんを執行役員にするTBSにはまだ見所があるなと思う。そしてそんな低い視聴率の「報道特集」を長年支えてこられているスポンサー企業も偉いなと思う。こういう企業の製品を是非、買っていただきたい。機会があれば、「報道特集」も覗いてみてください。

 

「バック・イン・ザ・USSR!」=金平茂紀

 

毎日新聞 20150424日 東京夕刊

 かつて僕がソ連末期のモスクワで勤務していた時代の話を書こう。今から四半世紀近くも前のことである。その当時の国営テレビ、ゴステレの夜の定時ニュースは「ブレーミャ」という名前で、その御用報道ぶりでよく知られていた。そんななかで、ゴルバチョフ大統領の登場と共に「グラスノスチ」=情報公開の波が徐々にではあるが、かのソ連においても広がりつつあるかにみえた時期があった。けれども、ゴステレにおいては、「言論の自由」を掲げて果敢に報道する姿勢をみせた記者、キャスターらには直ちに容赦のない弾圧が加えられていた。「ブレーミャ」は生放送ではなく数秒遅れの疑似生放送の形式がとられていたが、それは政府に不都合なことをチェックする(=カットする)ためだと言われていた。1991年8月19日、ゴルバチョフが保守派の企てたクーデターで身柄を拘束された際に、「ブレーミャ」では、アナウンサーが重々しい口調で、ゴルバチョフ大統領が病気になったため、ヤナーエフ副大統領が大統領の職務を代行すると報じた。国民にうそをついていたのである。ところが、この保守派クーデターに反対するエリツィン・ロシア大統領に呼応して市民が蜂起し、クーデターが挫折し、ついにはソ連が崩壊するに至る事態が起きるや、ゴステレでは大変なことがおきた。それまで政権の言う通りの放送を流していたクラフチェンコ・ゴステレ会長がエリツィンによって解任された。それを聞いた市民らの間から歓声がわき起こった。クラフチェンコ会長はその後、ゴステレの放送に登場し、公開の場でその責任を追及されていた。僕はそれらの番組をリアルタイムでみていた。御用放送人の末路は必ずこのようになると確信した。かつての強大な政権与党=ソビエト共産党は、気に入らない放送を流すような事態が起これば、容赦なくその関係者らを呼びつけ処分した。

 さて、僕らの国にも放送法があって、報道の自由、言論の自由が守られている(はずだ)。それらの法律は、戦前・戦中の暗黒時代の反省の上に、究極的には国民の知る権利を守るために作られた法律だ。その放送法を盾に、政権党が個別番組の内容に絡んでテレビ局幹部を呼びつけ「事情聴取」した。僕は、ああ僕らの国はあのソ連時代に向かっているのかと思った。来日中のポール・マッカートニーなら「バック・イン・ザ・USSR!」と皮肉まじりにシャウトするだろう。でも、笑えないな。ソ連は滅びた。(テレビ報道記者)

金平さんがキャスターをされている「報道特集」の冒頭で自民党によるテレビ朝日の事情聴取について語っておられます。

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