シャープにみる 良い「選択と集中」と悪い「選択と集中」 | 21世紀のケインジアンのブログ

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 今の世の中では「選択と集中」がもてはやされているが、新たな投資の決断を伴わない単なる撤退を、安易に「選択と集中」と呼ぶべきではないと私は思う。「撤退」は固定費の削減で一時的な増益につながる。だが、それだけでは事業規模が縮小し、成長が止まる。持続的に成長するために経営者は「投資の決断」を下さなくてはならない。

 

「パナソニック、ソニー、シャープの家電3社は前期に過去最大の赤字を出したが、一方で、『選択と集中』で社会インフラに軸足を移した日立製作所や東芝は利益を上げている」という見方もあるだろう。家電3社が苦しむテレビ事業で、日立、東芝はいち早く海外への生産委託を進め赤字の芽を摘んだ。それ自体は迅速な経営判断と評価できる。しかし気になるのは日立、東芝にもテレビに代わる成長事業が見えないことだ。

 例えば日立は、かつて世界の先端を走った大型汎用コンピューターや半導体事業をやめ、パソコンをやめ、米IBMから買収したハードディスク駆動装置(HDD)事業を売却し、テレビの国内生産も打ち切った。しかし、それに見合う新規事業は生まれていないのだ。

今の日本の電機大手は「選択と集中」という美名下に、「撤退」を繰り返す単なる縮小均衡を無意識の内に目指しているように見える。新たな投資の決断を伴わない単なる撤退を、安易に「選択と集中」と呼ぶべきではない。

「選択と集中」を唱えたのは経営学者のピーター・ドラッカーで、それを実践したのがゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチ元会長だとされている。

http://profile.allabout.co.jp/w/c-75426/

 
 ウェルチ氏が「選択と集中」で売却したのが、当時GE傘下のRCAである。撤退を繰り返したRCAは、最後には、ウェルチ氏に捨てられた。その後GEは撤退に見合う投資で復活しているた。
 

 ジャック・ウェルチの「選択と集中」は世界で二位以内に入れない事業からは撤退するとともに、M&Aなどの投資により、世界で二位以内に入れる事業を新規に組み入れる。会社の活力を保つための事業ポートフォリオの新陳代謝のための入れ替えである。これは、シュンペーターの説く「創造的破壊」と相通ずるものがあるのではないかと私は思う。

 

 冒頭のシャープのように、他の事業からは、ほとんど撤退し、液晶テレビ事業だけに絞るという一本足打法は、極めてハイリスクであり、失敗したときは、会社の屋台骨が揺らぐということを肝に銘じる必要があろう。最近は、なんでもかんでも「選択と集中」を褒め称える風潮があるが、良い「選択と集中」と悪い「選択と集中」があるということを忘れてはならない。