砂漠の国の物語 外伝4-3 | みむのブログ

みむのブログ

こちらはス/キップ/ビートの二次小説ブログです。CPは主に蓮×キョ-コです。完全なる個人の妄想から産まれた駄文ですので、もちろん出版社等は全く関係ありません。
勢いで書いていますので時代考証等していません。素人が書く物と割り切ってゆるーく読んでください。

こんばんは。みむです。
立て続けにUP!

こちら、パラレルでございます。
お嫌いな方はバックぷりーず。




砂漠の国の物語 外伝4-3





「…ねぇ」

カナエの呼び掛けに、真っ赤な目が上げられた。

「あんたの耳は、聞こえる方?」

唐突な問いに、キョーコが目を瞬かせた。

「好きよ。」

ポカンと口を開けたキョーコから視線を逸らし、頬杖をついたカナエが行儀わるく舌打ちをした。

「あたしはあんたが好きよ。ねぇ、聞こえてる?あんたのそのご大層な耳は。遥か昔に聞いた母親の声ばかりよみがえらせて。今、伝えてるあたしの言葉も、声も、届けないのかしらね。
ねぇ、悪魔の子なんて言われたあんたを、周囲すべてを不幸に導くなんて言われたあんたを、好きだなんて言う私は、もうどこかおかしくなってるのかしら?」

ねぇ、あたしはどこかおかしい?

涙も声も消えてしまったキョーコの髪を撫でて、イツミも微笑んで言った。

「わたしもよ。わたしもキョーコちやんが大好きよ。…ねぇ、キョーコちゃん。わたしもカナエも、キョーコちゃんが陛下のそばにいるのが嫌なら、いくらでもこの部屋に来てくれたらいいと思ってるのよ。」

でも、そうじゃないでしょう?

彼女が夜中に何度も目を覚ましてしまっていることを、カナエもイツミも気づいている。
眠れず、窓の外をそっと見ていることを。彼の居室がある方向を、見ていることを。

「キョーコちゃんが、そんな妄言ばかり信じて、そんな理由で逃げているのなら、私達は"それはいけない"と言わなければならないわ。」

「わかる?あんたがあんたを、自分で傷つけてるからよ。」

「私達はそれが許せないわ」

「別にあの王との子供ができようができまいが、いっそどうでもいいの」




「いっそ、子供は二の次なんです」

「おいおい…」

うなだれるヤシロに、レンは綺麗な笑顔を向けた。

「だって、ヤシロさん、彼女は、『幸せだ』って、言ってくれたんです。」


初めて、抱いた時。
幸せだと、言ってくれたんです。


その言葉に、涙が出そうだったなんて、彼女は知らないだろう。

言葉一つでこんなにも、俺を幸せにしてくれただなんて、彼女は気づいていないだろう。

「俺は彼女に幸せを与えたい。こと、これに関してだけは。子供も作らなくてはならないからではなく、俺が彼女を愛しているから、そうするんだと。」

レンの顔を見て、ヤシロは思わず視線を逸らし、ぐしゃりと乱暴に自身の髪をかき混ぜた。

…ヤシロとて、こんな言葉は言いたくない。けれど、言わなくてはならない。

「…だが、今はまだよくても、子を産まぬ王妃への風当たりは強くなる。逆に、お子を産めば彼女の地位は安定するぞ。」

「同じ事は二度言いません。」

そっけなく言って酒をあおるレンにヤシロは顔を覆って俯いた。



iPhoneからの投稿