こんばんは。みむです。
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砂漠の国の物語 外伝4-3
「…ねぇ」
カナエの呼び掛けに、真っ赤な目が上げられた。
「あんたの耳は、聞こえる方?」
唐突な問いに、キョーコが目を瞬かせた。
「好きよ。」
ポカンと口を開けたキョーコから視線を逸らし、頬杖をついたカナエが行儀わるく舌打ちをした。
「あたしはあんたが好きよ。ねぇ、聞こえてる?あんたのそのご大層な耳は。遥か昔に聞いた母親の声ばかりよみがえらせて。今、伝えてるあたしの言葉も、声も、届けないのかしらね。
ねぇ、悪魔の子なんて言われたあんたを、周囲すべてを不幸に導くなんて言われたあんたを、好きだなんて言う私は、もうどこかおかしくなってるのかしら?」
ねぇ、あたしはどこかおかしい?
涙も声も消えてしまったキョーコの髪を撫でて、イツミも微笑んで言った。
「わたしもよ。わたしもキョーコちやんが大好きよ。…ねぇ、キョーコちゃん。わたしもカナエも、キョーコちゃんが陛下のそばにいるのが嫌なら、いくらでもこの部屋に来てくれたらいいと思ってるのよ。」
でも、そうじゃないでしょう?
彼女が夜中に何度も目を覚ましてしまっていることを、カナエもイツミも気づいている。
眠れず、窓の外をそっと見ていることを。彼の居室がある方向を、見ていることを。
「キョーコちゃんが、そんな妄言ばかり信じて、そんな理由で逃げているのなら、私達は"それはいけない"と言わなければならないわ。」
「わかる?あんたがあんたを、自分で傷つけてるからよ。」
「私達はそれが許せないわ」
「別にあの王との子供ができようができまいが、いっそどうでもいいの」
「いっそ、子供は二の次なんです」
「おいおい…」
うなだれるヤシロに、レンは綺麗な笑顔を向けた。
「だって、ヤシロさん、彼女は、『幸せだ』って、言ってくれたんです。」
初めて、抱いた時。
幸せだと、言ってくれたんです。
その言葉に、涙が出そうだったなんて、彼女は知らないだろう。
言葉一つでこんなにも、俺を幸せにしてくれただなんて、彼女は気づいていないだろう。
「俺は彼女に幸せを与えたい。こと、これに関してだけは。子供も作らなくてはならないからではなく、俺が彼女を愛しているから、そうするんだと。」
レンの顔を見て、ヤシロは思わず視線を逸らし、ぐしゃりと乱暴に自身の髪をかき混ぜた。
…ヤシロとて、こんな言葉は言いたくない。けれど、言わなくてはならない。
「…だが、今はまだよくても、子を産まぬ王妃への風当たりは強くなる。逆に、お子を産めば彼女の地位は安定するぞ。」
「同じ事は二度言いません。」
そっけなく言って酒をあおるレンにヤシロは顔を覆って俯いた。
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