おはようございます。みむです。
ああ、前の話を上げてからもう約二週間ですね…。
わたくし、やっと盆休みですー!いえー!
世間ではすでに盆休み後半戦とのこと…あれ?私の前半どこ行った??
さて、無駄話はこれくらいにして
砂漠の国の物語 外伝4-2
今更ですが、桃色とは別の意味でちょっと…限定にしたかったかも。
皆様の大人な対応を願います。
砂漠の国の物語 外伝4-2
「お前、わかってるんだろ。キョーコ様が毎月同じ頃にカナエさん達の所へ行く理由」
ヤシロの詰問に、レンは琥珀の酒の揺らぎを見ながら、ただ微笑んでみせた。
ヤシロは自分の杯を一気にあけて、溜息をついた。
「心配した女官長から俺にご注進が入ったんだ。俺が知らされる位だ。お前はとっくに知っていただろう」
月に、数日。月の同じ頃に、寝室を別にする夫婦。
「俺は彼女に何も言うつもりはありませんよ。ただ、月に一度。仲の良い侍女達と一緒にいたいと言ってるだけだ。昼間はあんなに働いてくれる彼女のお願いを、無下にすることなんてできません。」
「…そうやって、気づかないフリを決め込んでいるのか。…だが、女官長の心配は最もだ。彼女はお世継ぎの誕生を心待ちにしている多くの人の筆頭だ」
斬り込むヤシロの言葉に、レンはただ酒を舐める。
王の居室に比べれば簡素なヤシロの自室でも、彼がいるだけでいちいち優雅な空気に変わる。
世継ぎ問題は王国の重要課題だ。
けれどいっかなとりあわない様子の王の姿に、腹心の心も苛立つ。
「レン」
「ヤシロさん。ことこれに関しては、俺は俺のワガママを通させてもらいます。」
「お前のワガママ…?」
キョーコ様のではなくて?
訝しげに眉をしかめるヤシロに頷いて、レンは手酌で酒をついだ。
「女官長とヤシロさんの予想は当たってると思いますよ。俺の予想もそうです。…彼女は子供ができるのを恐れている。」
子供ができそうな夜に、俺から離れるのはそのためでしょう。
あまりといえばあんまりな事をさらりと言ってのけた主君に、ヤシロは咄嗟にどう反応したらいいのか迷ってしまった。
言ってしまえば、ささやかな抵抗だ。
夫婦は完全に寝台を別にしているわけではない。
彼女が把握している日程が、絶対であるわけではない。
彼女もそれを知っているだろうに、けれど、やめられない抵抗。
彼女の、ささやかな、逃避。
「いいんですヤシロさん。だって彼女は…」
「だって…だってモー子さん…」
ウロウロと揺れる瞳に、カナエはしかしほだされることなく「だってじゃない!」と叱りつけた。
「あんたはいつまで、その母親の妄執にとり憑かれてるつもりなの!」
跳ね上がったキョーコの肩を、反対側からイツミが優しく撫でた。
涙の堰が今にも決壊してしまいそう。
星を含む綺麗な瞳を覗き込み、イツミが優しく夜の帳の髪を撫でた。
「子供の頃に刷り込まれたくだらない妄言をバカみたいに信じ込んで、いつまでもウジウジと!……ちょっとはマシになったと思ってたのに。」
手巾をキョーコに渡したカナエが、相変わらずのしかめ面でホロホロと零れる涙の雫を目で追った。
「わかってる…わかってるのよ…王妃としてこの国に戻ってきた、その意味位。でも…わたしなんかが…」
キョーコの言葉を聞いた途端、カナエの柳眉がキリリとつり上がった。
「おだまり!それ以上言ったら絶交よ!」
びしりっと突きつけられた指先に、キョーコの喉が「ひぐっ」と鳴いた、
「今はあんたに"王妃"さまの在り方なんて言ってないわよ!あんたのその行き過ぎた自己卑下をやめろと言ってるの!」
「でも!」
一際大きなキョーコの悲鳴に似た声に、カナエの口が閉じた。
揺れる瞳。悲痛なほどに。
その訴えは、ひたすらに喘ぐように
「わたしなんかが…母親になんて…あの方の、お子を…なんて…もし…わたしと同じ、お子が産まれてしまったら…!」
恐くて…
ホロホロと涙を流すキョーコに、カナエの肩から力が抜けた。
やりきれない思いに、自身の黒髪をぐしゃりとかき混ぜる。
悪魔の子と、
そんな
なんの根拠もない決めつけを
けれど根拠なんて必要ない無垢な子供に刷り込んだ。
「…あたしにはあんたの母親こそが悪魔だわ」
会ったこともないけど。というカナエの呟きに、「お会いしたくもないわね」とイツミが返した。
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