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ダウン症の愛娘の子育てと、シンガーソングライターとしての音楽活動を楽しんでいます。
みなさんが元気でやさしくなれる情報をお届けいたします!

前回の記事では

あたしの義父である
おとーさんが

天国へ

旅立った日のことを書いた。

 

 

 

看護師さんたちに
あたたかく送り出していただき

あたしたちは
いよいよ葬儀の準備を
始めることになった。

 

 

コロナ禍だった。

親戚も高齢者が多く
持病のある人もいたため

葬儀は家族だけで

静かに見送ることにした。

 

 

 

慌ただしく過ぎていった数日。

だけど、その準備の中で。

あたしたちは
おとーさんから
最後の贈り物を
受け取ることになる。

 

 

 

葬儀の準備では
たくさんのことを
決めていかねばならない。

そのひとつが
遺影選びだった。

だけど、おとーさんは
終活なんてしていなかった。

 

 

それも、そのはず。

事故に遭うまでは、
近所でも有名なくらい元気で

「この人は百歳まで生きる。」

誰もが
そう思っていたからだ。

だから当然
遺影用の写真なんて
一枚も残していなかった。

 

 

でも。

あたしとパパには
最初から候補が一枚だけあった。

「あれしかないよね。」

二人とも
同じことを考えていた。

 

 

身体障害者手帳を作る時に

何枚もの写真の中から
家族で選び抜いた

おとーさん史上
最高の笑顔の写真。

あの写真しかない。

そう思っていた。

それがこれ。

 

 

何かの写真を

トリミングして作った画像。

この画像をプリントアウトし

写真にして

葬儀屋さんとの

打ち合わせに持参した。

 

 

しかし

葬儀屋さんは

写真を見るなり笑った。

 

「いやいやいや!

 このトリミングした

 アップの顔だと

 遺影全体が顔になって

 ギョっとなりますよ!

 もうちょっと

 バストアップというか

 引きのデータありませんか?」

 

 

言われてみれば

その通りだった。

あたしたちは思わず

笑ってしまった。

 

 

家に帰ってから

パパのWindowsに保存されていた

この写真の元データを探した。

しかし。

しまった‥‥。

この写真の背景は

どんなだったっけ?

 

 

トリミングしてしまったデータが

誤って

上書きされてしまったまま

保存されていた。

 

うぅっ‥‥

あたしとしたことが‥‥

なんという失態‥‥。

 

 

 

いや、デジカメのデータは

パパのWindowsと

あたしのMacどちらにも

保存されていたはず。

諦めてたまるか!

複製データでもなんでも

どっかにはあるはずだ!と

二人で血眼になって探してみた。

 

 

 

でも、なかなか出てこない。

探せど探せど

おとーさんのあの最高の笑顔は

どこにも無かったのだ。

 

 

どこだろう‥‥

どこだろう‥‥

 

 

いろんな写真フォルダを、

ひっくり返し、ひっくり返し‥‥。

どれくらいの時間探しただろう。

 

「あ!あった!」

 

 

あたしのMacの写真アプリの中に

おとーさんのあの笑顔があった。

そしてMacならきっと

今の私のピンチを

救ってくれるはずだ!

 

 

その時だった。

あたしのMacに

残っていた写真を開くと

「オリジナルに戻す」

という表示が目に入った。

 

 

 

押してみた。

すると。

トリミングされる前の
写真全体が現れた。

その瞬間。

あたしは、
言葉を失った。

 

 

そこにはなんと。

あたしがいた。

あーちゃんがいた。

真ん中には、
満面の笑みの

おとーさんがいた。

 

 

あたしと
あーちゃんが

おとーさんを
両側から挟んでいた。

まるで
おとーさんを
サンドイッチしているようだった。

そして。

その写真を撮っていたのは
実の息子、パパだった。

 

 

これを見た瞬間に

思わず涙が溢れてしまった‥‥。

 

 

まいったなぁ‥‥

おとーさん‥‥

天国に行ってからも

こんなサプライズかよ‥‥。

 

 

そうか。

そういえば

この写真だったんだね‥‥。

 

 

 

その日は父の日。

プレゼントを持って
おとーさんに

会いに行った日だった。

 

 

身体障害者手帳を作る時は

ただ「いい笑顔だから。」

それだけで選んだ写真だった。

あの時は、理由なんて

考えもしなかった。

 

 

でも。

今なら分かる。

どうしておとーさんは
あんなに幸せそうな

笑顔だったのか。

 

 

おとーさんは。

家族の真ん中にいたんだ。

 

あたしたちに
囲まれて。

大好きな家族に囲まれて。

だから
あんな笑顔だったんだ。

 

 

そしてあたしら親子は

本当におとーさんに

心から

愛されていたんだよね‥‥。

 

 

この笑顔がすべてを

物語ってくれてるよ‥‥。

 

 

遺影を選んでいたはずなのに。

気づけば

おとーさんからの

あふれる愛を

受け取っていた。

 

 

ひとしきり泣いた後

この写真をプリントアウトして

葬儀屋さんに飛んで行った。

 

「この写真
 あたしたちも写っていますけど……
 遺影に使えますか?」

 

 

葬儀屋さんに尋ねると

「大丈夫ですよ。」

そう言って

写真からあたしたちを消し

首の向きや身体のバランスを整え

自然な遺影に

仕上げてくださることになった。

 

 

背景は
青空を選んだ。

おとーさんは
畑仕事が大好きだった。

 

「青空でも大丈夫でしょうか。」

 

そう尋ねると

 

「このお父様の笑顔だったら

 青空バックにガラスで反射して

 とっても爽やかで

 すごくいいと思いますよ。」

 

そうアドバイスをしてくださった。

 

 

完成した遺影を見た時。

そこには

いつものおとーさんがいた。

 

 

元気だった頃の

やさしくて

あったかくて

家族が大好きだった

あのおとーさんだった。

 

 

後日
完成した遺影を見た

おとーさんの弟さんも

 

「いい写真だなぁ‥‥」

 

そう言って
涙を流してくれた。

 

あの日。

あたしたちは
遺影を探していた。

でも。

本当に見つけたのは

一枚の写真じゃなかった。

 

 

 

おとーさんが

どれほど
あたしたちを
愛してくれていたのか。

その証だった。

 

 

 

おとーさんは

旅立ったあとも

最後の最後まで

あたしたちに

愛を教えてくれた。

 

 

 

 

ねえおとーさん?

あたしはね

この遺影のおかげでもう

寂しくなくなったんだよ。

 

だってまるで

おとーさんが目の前に

生き返った気がするんだもん。

元気な姿になってさ。

 

 

親っていいもんだね。

いつでも守って

くれてる気がするんだ。

 

 

遺影って

遺された家族のための

ものなんだよね。

ありのまんまの

やさしいおとーさん

そのものだもん。

 

 

あんなカジュアルな

一枚のスナップ写真が

あたしにとっては

宝物だったよ。

 

 

 

おとーさん

あたしら子供たちを

めいっぱい愛してくれて

本当に、本当に

ありがとう‥‥。

 

あたしたちは

これからもおとーさんのこと

愛して生きていくからね。

 

 

どうか

ずっと

ずっと

ずーっと。

あたしたちの頑張る姿

天国から見守っててね。

 

 

きっと今日も、

あの笑顔で、ね。