先日、「和泉宏隆を奏でる会」に参加してきました。もとT-スクェアのピアニストで、「宝島」の作曲家でもある和泉宏隆さんが3年前に急逝され、和泉さんの残した楽曲を皆で演奏しようという会です。
ふだん参加しているコンクールやピアノの先生向けのイベントとは違って、和泉さんのライブに通い詰めていたファンの方々が、和泉さんの曲が弾きたい一心で一生懸命練習されて登場します。和泉さんの曲が弾きたくてピアノを始めた方も珍しくありません。いろいろなお話で盛り上がりましたが、
「プロの方は練習しなくても弾けるんですよね?」
という趣旨の質問が結構ありました。
これはある意味正しく、ある意味間違いですね。
初見でたいていのものが弾ける、それを録音して売り物にできるクオリティの演奏ができるぐらいでないとプロは務まらない。
ただ、プロ生活では年齢を重ねて老化する条件のなかで、常に自分のベストの演奏をして、常連さんを飽きさせず進化していかないと、お客さんはがっかりして去ってしまいます。
私が知っている多くのプロのピアニストは、スポーツ選手が「現役」でいるためのトレーニングのように、日々のスケールアルペジオといった基礎練習を30分から1時間程度やっています。コンサートで演奏する日はリハーサルと本番で3時間以上は演奏。コンサートがない日は、腰を据えて落ち着いて数時間、練習。ピアニスト兼作曲家の方は、さらに作曲もあるので本当に忙しそうです。
たいていのミュージシャンのかたは、練習だけたくさんしても本番が少ないと調子が出づらくて、やはり毎日たくさんステージがあると、疲れている様子でも音はいいなと思うことが多いです。だから練習だけしていればいいというものでもない。
日々のスケールといった基礎練習は、プロでも・・・というか、プロだからこそ、毎日やっています。
プロスポーツの選手でも、現役の間はトレーニングをしているでしょう? そして現役を退いたらトレーニングはやらなくなると思うのですが、ピアノの場合は、日々のスケールなどの基礎練習を含めた練習、そしてある程度の頻度での本番ステージを続けている人は「現役」。やめている人は「引退」です。
私は威張るほど現役でもないんですけど、とりあえずコンクールのステージに立てる位の状況には何とかなりました。
ピアノの先生で私に習いに来ている門下生の皆様は、ほぼみなさん「現役復帰」を目標にしています。
私自身がそうだったので、現役復帰のノウハウが蓄積されていますのでね。
ということで、現役の人は、毎日スケールを弾いて練習しっかりやってますよ。
弾かなくなったら引退ってことです。
もちろん引退してからの現役復帰もありですね。