ちょっとつぶやき -19ページ目

ちょっとつぶやき

徒然に書き綴っております

太陽が山に沈み
白い月が黄金に耀き始める

嘆き悲しむ館の中で
次の帝が動き出す

五月七日は 涙する事なく
風も吹かぬのに 黒髪を更々と靡かせ
崩御した帝の足元の傍にいた


湖に浮かぶ館の中では
鬼姫が 最後の別れをすべく支度をしていた

童子達は 其其の色の衣を羽織り 
鬼姫は 黒い衣を羽織り陣を組んだ

風が渦を巻き 桜の花弁が鬼と童子達を包むと歪み消えた


つむじ風が舞い 嘆き悲しむ館のもの達はつむじ風に目を閉じ 止んだ風に目を開けた

庭に鬼姫と童子達が現れ
その姿を見た者達は 驚きと恐怖で動けなかった

その場にいた陰陽師さえも


帝の傍に行くと 
鬼姫は言った

そなたを守る為に その身を投げ出し命を惜しまなんだその娘
喉を喰われ息も絶え絶えのその娘を助けてたもれ と泣き叫んだ童よ
そなたと結んだ約束を解く日が来たぞ
伴に 黄泉の世で語り合え


五月七日 長き門ご苦労であった
此にて そなたを解放す

その言葉を聴いて 五月七日は微笑むと
とてもとても清んだ まるで朝露の若葉のように人々の心を清々しくさせるそんな声で 

鬼姫様 帝のお側に居させて頂き幸せでした
ありがとう御座りました

と深々に頭を下げた

闇はひそひそと足元に忍び
心の隙間を覗き見する

今宵も 百鬼夜行が
ひゃひゃとぞろぞろ歩みを進める

桜が咲き 桜が散る
湖の上に浮かぶ館には
今宵も 童子の声が楽しげに響き渡る  

杯を傾けつつ
今宵の月を眺めて桜の花弁が舞う庭を見ていた

母様 都にて帝が崩御なされました
五月七日様をいかがなされますか

柊が 鬼姫に伝える

人の命とは 脆く儚いものだと
昔は笑っていたが こうも関わりを持ち人に近しくなればなるほど
この桜のように 散りは咲く永久の理を
見ているようで 何とも言いがたい

鬼姫が 杯を空にしては満たし
舞う桜の花弁が杯に一片浮かび消えて行くのを 眺めている

柊は 黙って鬼姫を見つめている

酒に桜が溶け 桃色に変わる
その杯を飲み干すと

柊 五月七日はわちの通る門になる
じゃが帝から 命が尽きたときには解放する約束をしておる
葬儀の日 帝が埋葬されるその時に五月七日は灰になり解放される
それで善い

御意

柊はそう言うと 鬼姫の傍から離れた
ぶ厚い雲が空を凪がれ
風は 人々の間をすり抜けぶつかり
当てもなく 何処かに向かってゆく

世を嘆いて 啜り泣く女の声は男の声は
次第に 罵りと罵声に変わる

どの世も 全て似たような事
嘆いて身を粉にするだけで
前に進めぬは
男も女も同じ