ちょっとつぶやき -20ページ目

ちょっとつぶやき

徒然に書き綴っております

暑い陽射しが注ぐ

私が あの方の婚儀を知ったのは
丁度 こんな暑さだった

あれ程 重ね合い言葉を紡ぎながら
あの方は 私より己の欲を取った
それでも 私はあの方が来る時を願い
待ちわびながら 時を過ごしていた

どれ程の時を眺めていたのだろう

あの方が 私の元に来た

あぁ 芒の姫
すまぬ すまぬ そなたの心を悲しみに突き落としておきながら 会いに来てしまった
あぁ 芒の姫
愛おしい 芒の姫
どうか どうか 私を拒まないでおくれ

あの方が 私に言う言葉を 呑んでしまった
あの方と言葉を紡ぎながら重ね合い時を過ごしてしまった
あの方は 妻の元に帰り
私はまた あの方を想う日々を過ごしていた

何度の逢瀬を重ねたのだろう
何度 心を切り裂いたのだろう

あの方は私を西の国に住まわすと
やがて来なくなり 聞こえてきたのは あの方に壱の皇子が産まれたと

あぁ そうか
あの方は 私をまた利用したのか
憎らしい
男など 信じてはいけない

伏せ潰されて 涙ながれ 紡ぐ言葉は
憎らしい
憎らしい
男など 騙しその身体を喰いつくし骨を重ね屋城につこうてやりたい

幾日が過ぎたのか

私の顔は 口元が頬まで広がり 眼は涙で今にも零れ落ちそうに潤んでいる

あの方の使いがやってきた
私は 男の匂いに食をそそられ 人間の男を喰い気付いた
私は 物の怪になったのだと

男を喰う事で 私は満たされる

生きたまま物の怪になるとは
念の強い女人であったのじゃな

満たされ
骸を握りしめる私を 西の鬼は見ていた

紅い髪を束ね 私を見下ろし 薄ら笑いの西の鬼

私は ただ見上げていた


闇が 世を支配して

物ノ怪が 闊歩する

亡骸は朽ちてゆき

這う虫が 肉を食い

その虫を 餓鬼達が口に放り込む

なんとも浅ましい 喰うても喰うても餓えがおさまらぬ

まるで戦をして人を殺めねば心の餓えが満たされぬ人間の様のように

平な世を望み 泣く人の世にならぬ事を願い
己が 人の命を啜らねばならぬ鬼もいれば

人を愛でながらも 人の命を喰う鬼もいる


理は なんの基にあるのや

神仏を拝む人の世を 悪戯に双六を振り惑わせる

鬼は非情にて 遊びを辞めぬ

その遊びを止めて 輪廻を知りたい

やはり 人にも鬼にもなりきれぬ


山の奥にある湖に浮かぶ屋敷を 月が照らして時は進む
星が 闇夜に煌めき
月は 冷たい世界に
突き刺す様な光を放つ

酒を飲み干しては
杯に満たす

人は 酒を呑みこの世の不条理に嘆き
人は 酒を呑み己に欲を抱き
人は 酒を呑み人の心を殺め 人を殺め
人は 酒を呑み己を陽気にし
人は 酒を呑み人と和を造る

なんと 楽しいそうな事よ

姫鬼はクスリと笑うと 杯を空ける

母様ー!

童子達が 駆け寄って踊り始めた

なんと 楽しいそうな

微笑んで 見ている

母様 東の鬼が 人を集めて唄ってたの!

見ていて楽しかったから 東の鬼の歌で踊ってたの!

人々に見られないように 姿は見せなかったから大丈夫!

童子達は 並んで踊り 輪になって踊り

ケタケタ笑っては 踊っていた

童子達の笑顔に魅せられて 姫鬼も笑顔になり体を揺らしながら 東の鬼の姿を浮かべていた