【今回見た映画】

ナチュラル・ボーン・キラーズ(1994米)

教皇選挙(2024米・英)
四月になれば彼女は(2024日)
太陽の帝国(1987米)
最前線物語(1980米)

火垂るの墓(1988日)
大地(1937米)
情婦マノン(1949仏)
引き出しの中のラブレター(2009日)
劇場版ドラゴンボール神龍の伝説(1986日)




ナチュラル・ボーン・キラーズ ★★★☆☆
1994米。118分。オリバー・ストーン監督・脚本(共同)。クエンティン・タランティーノ原案。ウディ・ハレルソン。ジュリエット・ルイス。ロバート・ダウニー・Jr。トミー・リー・ジョーンズ。

幼少時から父親に性的虐待を受けて育ったマロリーは肉屋の配達人ミッキーと恋に落ち、両親を殺害して逃避行に出る。

2人は車でルート666を旅しながら無差別殺人を繰り返していく。

52人もの命を奪った彼らは報道合戦によって全米の注目を集めるが、やがて捕まり投獄される。

犯罪番組のキャスターで有名記者のゲールは刑務所内でミッキーの生インタビュー番組を実現した。

刑務所内で番組を視聴していた囚人たちは興奮して暴動を起こし、ミッキーとマロリーはゲールを人質に取って脱走する。


行く先々で殺人を繰り返すカップルの逃避行を描いたバイオレンス映画。欧米各国で年齢制限公開や上映禁止となり、話題を呼んだ。フィルム、VTR、アニメ合成など、MTV風の目まぐるしく移り変わる映像が特徴。(wikiより)


予備知識はなかったので、最初はアメリカン・ニューシネマかと思った。

「俺たちに明日はない」と似ていると感じたので。

1994年公開なので、時期が全然違った。

オリバー・ストーン監督だと知って意外だった。こんな映画も撮るんだ。

クエンティン・タランティーノ原案となっていた。こちらはイメージ通りだった。

この2人が絡んだ経緯をネットで読み、興味深かった。


本作は「コロンバイン高校銃乱射事件」の犯人など多くの影響を与え、各地で模倣犯が発生したそうだ。

ナイーブにすぎるとは思うけど、分からなくもない。

ドタバタなブラックユーモアみたいな内容ながら、映像は凝っていておしゃれ。

見る人によっては、マロリーとミッキーも格好良く感じられるかもしれない。


映画は個性的で面白かった。人を選ぶのは確か。嵌まる人は嵌まると思う。

作品に罪はないし、冷静に楽しみたいものだと思う。




教皇選挙 ★★★☆☆
2024米・英。120分。エドワード・ベルガー監督。レイフ・ファインズ。スタンリー・トゥッチ。ジョン・リスゴー。イザベラ・ロッセリーニ。

ローマ教皇が心臓発作で亡くなった。

教皇選挙(コンクラーベ)を執行するために、世界各地から枢軸卿団が召集された。

虚々実々の駆け引きが始まる。

話題作がAmazonプライムに入っていたので早速見た。

おじさんばかりで華のない画面が続くけど、内容は興味深い。

最後に明かされる秘密にはびっくり。




四月になれば彼女は ★★★☆☆
2024日。108分。山田智和監督。川村元気原作。

木戸雄一郎・山田智和・川村元気脚本。小林武史音楽。佐藤健。長澤まさみ。森七菜。仲野太賀。中島歩。河合優実。ともさかりえ。竹野内豊。


精神科医の藤代俊に昔の恋人・伊予田春から手紙が届く。


「天空の鏡」ボリビアのウユニ塩湖から出されたその手紙には、10年前の初恋の記憶が書かれていた。


その後も春は、プラハやアイスランドなど世界各地から手紙を送ってきた。


一方、俊は婚約者の坂本弥生と結婚の準備を進めていたが倦怠感も感じていた。


そんな中、弥生は突然姿を消してしまう。


「愛を終わらせない方法、それはなんでしょう?」という言葉を残して…。



以前に小説を読んだ。

あまり記憶に残ってなかったのでブログを見たら、「おしゃれな小説だった」と書いてあった。

映画にするとおしゃれな感じはなくなっていた。邦画の力かもしれない。

良くも悪くも。というか、どちらなのか分からないけど。

最後に弥生と再会するところは感動した。

映像の力、役者の力だと思う。佐藤健も長澤まさみも良かった。




太陽の帝国 ★★★☆☆

1987米。151分。
スティーヴン・スピルバーグ監督・製作(共同)。
クリスチャン・ベール。ジョン・マルコヴィッチ。ジョー・パントリアーノ。伊武雅刀。ガッツ石松。山田隆夫。

日中戦争中の上海。イギリス人少年ジェイミーは、日英開戦で日本軍が上海のイギリス租界を制圧した時の混乱で両親とはぐれ、浮浪児となる。


生きるために盗みを重ねたジェイミーは日本軍に捕らえられ、蘇州の収容所へ送られる。


飢えや病気、戦争の恐怖と隣合わせの過酷な生活の中で、収容所の人々と交流しジェイミーは成長していく。


原作は、イギリスの小説家J・G・バラードの体験をつづった半自伝的な長編小説。(wiki)


お金持ちのボンが一転して収容所へ。

映画としては惹き付けられるけど、辛い生活だ。

ジェイミーの、目の前のことに精一杯向き合って希望を失わない姿勢は尊敬する。

甲高い声で騒ぎ立てる、やかましい少年だなと最初は思ったけど(笑)、成長して良い若者になっていく。


収容所での日本兵が、捕虜にさほど酷いことをしていないのはほっとした。

少年兵とジェイミーの間には友情まで生まれていた。

原作は体験に基づいているそうだから、この辺も嘘ではないんだろう。

終戦後に再会した少年兵が誤解から殺されてしまうのは悲しい。


151分と長く、途中で中だるみを感じるところもあったけど、見せ場も多い。良い映画。スピルバーグ監督はやっぱりうまいと思った。

ただ、あまりヒットしなかったらしい。大作だけど、話がちょっと地味かもしれない。




最前線物語 ★★★☆☆
1980米。113分。サミュエル・フラー監督・脚本。リー・マーヴィン。マーク・ハミル。ロバート・キャラダイン。ボビー・ディ・シッコ。
第一次世界大戦を生き残った新兵の男は、軍曹となって第二次世界大戦に従軍していた。

男は4人の若い兵士を連れて各地を転戦する。男は新兵たちに"殺人ではなく、ただ殺すだけ"と教え、戦場で生き残ることの意義を伝えていく。


サミュエル・フラー監督の体験を元にした映画。

タイトルの通りに、最前線で戦い続ける兵士たちを描いている。

淡々としたエピソードの積み重ねに感じる。

最高の戦争映画とも言われているそうだ。




火垂るの墓 ★★★☆☆
1988日。88分。高畑勲監督・脚本。野坂昭如原作。辰巳努。白石綾乃。

昭和20年、神戸。14歳の清太と4歳の節子は空襲で母を喪い、叔母のもとに身を寄せる。

やがて叔母は兄妹を邪険に扱うようになり、2人はいびり出されてしまう。

誰もいない防空壕で懸命に生きようとする2人だったが、そこには戦災孤児の厳しい現実が待っていた。


原作は未読。第58回(1967年度下半期)直木賞受賞作品。

アニメ。

金曜ロードショーで見た。昔は毎年のように放送していたと思ったけど、久しぶりだった。

涙なくしては見られない映画。戦争について、社会について等、考えさせられる。

例えば自分が清太たったら。叔母の立場だったら。


アニメなので、絵的には多少柔らかい印象があるものの、内容は厳しい。

当時の戦災孤児についてありのままを描いたそうだ。

逆に反戦を訴えるメッセージも込めていないという。

wikiを読んだら、

“高畑は「この映画では戦争は止められない。映画で反戦を訴えるのであれば、“戦争を起こす前に何をすべきか”と観客に行動を促すことが必要だ」と言っていたという”

という箇所があった。とても合理的で納得感があると思う。


節子に続いて、清太も衰弱して最後には三ノ宮駅で亡くなってしまう。

幽霊になった2人が神戸の街を見おろすシーンは、何となくだけど「となりのトトロ」でサツキとメイが木の枝に座って母親の病院を見ているシーンを思い出した。

こちらはその後退院するシーンが描かれるハッピーエンドだったけど。

この2本が同時上映だったとは豪華だ。ただ、興業収入はそれほど伸びなかったそうだ。





大地 ★★★☆☆
1937米。138分。シドニー・フランクリン監督。
パール・S・バック原作。ポール・ムニ。ルイーゼ・ライナー。ケイ・ルーク。

中国の農夫・王龍(ワン・ロン)と玉蘭(オー・ラン)の夫婦は懸命に働いて成功し、幸せな日々を過ごしていた。


しかし、未曾有の干ばつによって2人は苦難に直面する。


白黒。


第10回アカデミー賞では主演女優賞(ルイーゼ・ライナー)、撮影賞を受賞。作品賞は「ゾラの生涯」。

原作は未読。有名な作品で、作者のパール・バックはノーベル文学賞を受賞している。


大作だった。

飢饉に苦しみながらも王龍は土地の切り売りをすることなく、苦労の末に成功する。

イナゴの大群はこの時代にどうやって撮影したのか分からないが、なかなか迫力があった。

玉蘭を失う時になって王龍は初めてその存在の大きさ、自分がどれだけ玉蘭を愛していたか気付く。

土地を売ったって玉蘭は戻らない…もっと大切にしておけばと見ていて思いつつ、人のことは言えないと自らを顧みたりもする。




情婦マノン ★★★☆☆
1949仏。100分。アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督・脚本(共同)。アべ・プレヴォー原作「マノン・レスコー」。セシル・オーブリー。ミシェル・オークレール。

ユダヤ人の一団を乗せイスラエルに向う貨物船から、若い男女の密航者が発見された。

男はロベール、女はマノンと言った。ロベールは身の上を語った。

1944年、レジスタンス運動に加わっていたロベールはマノンと知り合い愛するようになる。

マノンの兄レオンは贅沢好きのマノンをアメリカ人の金持ちと結婚させようとしていた。

ロベールはそれを知り、レオンを殺してマノンを連れて逃げた。

船長はロベールの話に同情し、ユダヤ人とともにパレスチナに上陸させ逃がしてやった。

ユダヤ人一行はイスラエルを目指して徒歩で砂漠を進む。

過酷な旅の途中で彼らはベドウィンの集団に襲撃され、全滅してしまう。

ロベールは銃撃で死んだマノンを砂中に埋める。そして彼もその上で息を引きとった。


白黒。

映画史上に残る名作ということで見てみた。

ロベールが射殺されたマノンの死体を逆さにかついで砂漠をさまよい歩くシーンが有名。

引き摺った後で担ぎ歩くシーンは、ちょっとシュール。白黒の映像が美しい。




引き出しの中のラブレター ★★★☆☆

2009日。119分。三城真一監督。常盤貴子。林遣都。中島知子。岩尾望。萩原聖人。本上まなみ。吹越満。伊東四朗。片岡鶴太郎。西郷輝彦。八千草薫。仲代達矢。


ラジオパーソナリティの久保田真生は喧嘩したまま他界した父親からの手紙を引き出しにしまったまま4年間開封出来ないでいる。


そんな中、真生は心の奥底にある想いを伝える企画「引き出しの中のラブレター」を担当することになる。



派手さはないけど、心暖まる良い話。


常盤貴子の声が昔からなぜか好きだ。もちろん、ルックスもきれいだと思うけどなぜか声に惹かれる。





劇場版ドラゴンボール神龍の伝説 ★★★★☆

1986日。50分。西尾大介監督。鳥山明原作。野沢雅子。鶴ひろみ。古谷徹。郷里大輔。納谷悟朗。森山周一郎。


7つ集めると神龍が現れてどんな願いも叶えてくれる、“ドラゴンボール”。


グルメス王国の捜索隊が探し当てたボールは、しっぽのある不思議な少年・孫悟空が持っていた。


更に、1人でドラゴンボールを探す少女・ブルマもやってきて・・。



原作マンガは全部読んだ。昔はとにかく流行っていた。


映画は原作を踏まえたオリジナルストーリー。


やっぱりドラゴンボールは面白い。








今回読んだ本。

「赤ひげ診療譚」 山本周五郎

「壬生義士伝」 浅田次郎





「赤ひげ診療譚」 山本周五郎


江戸時代中期。長崎留学から江戸へ帰った青年医師・保本登は小石川養生所へ呼び出され、働くように言われる。


御目見役医師に任じられる約束を反故にされ、登は不本意ながら働き始める。また、許嫁の天野ちぐさに裏切られたことにも鬱屈がたまっていた。


小石川養生所の責任者で壮年の医師・新出去定(にいできょじょう)に悉く反発する登だったが、彼と働き、様々な患者と接するうちに変わっていく。



連作短編。


赤ひげ(新出)には実在のモデルがいたそうだ。


以前に映画(「赤ひげ」1965年。黒澤明監督。赤ひげ役は三船敏郎)を見て、山本周五郎の原作であることも知っていたけど、モデルがいたことは知らなかった。



小説は登の方が主役で、読む前のイメージとは少し違った。


江戸時代の、最下層と思われる貧しい人たちの様子が伝わってくる。





「壬生義士伝」 浅田次郎


これは大傑作。面白かった。


吉村貫一郎という、そんなに有名じゃない(と思う。新撰組ファンなら分からないけど、少なくとも私は本書を読むまで知らなかった)剣士を中心にした話。


著者が縁の人を訪ねて、それぞれの立場から新撰組や幕末の戦いについて語ってもらうというスタイル。


途中で切腹時の吉村貫一郎のモノローグが入る。


語り口も多様で、吉村貫一郎なんかは方言まる出しなんだけど、雰囲気が出ていてすごく読みやすい。


上巻は京都で新撰組として活躍していた時の話が中心。


上巻の最後から下巻にかけての、斎藤一の語りが白眉。


ある意味ここがクライマックスで、一番面白かった。映画はここを中心に切り取ったと思うけど、その選択は頷ける。



下巻は故郷の人々の語り。


吉村貫一郎が脱藩するまで、戊辰戦争以降の敗走について、息子の嘉一郎の話。泣ける。



印象に残ったところ。※文春文庫 2020年5月25日第39刷を読みました。


上P64 御一新のこのかた、西洋の医術ってのがすっかり進歩して、人間は長生きになった。そのぶんだけ人生が間延びしちまってよ、ここに飯を食いにやってくる明治や日大の学生が、あのころの俺たちと同じ齢ごろだなんてとても思えねえ。


上P183 (前略)さすがは独眼竜正宗と謙信入道の血を引く両公。それを思えば、あの慶喜公など、どこかで神君家康様の血をたがえておるのではありますまいか。

少なくともわれらは、あんな腰抜けに忠義だてをして戦ったのではありませんよ。


(中略)わしらはまげてはならぬ義のために軍ばしたのじゃ!


上P221 「あの大和守安定はな、嘉一郎が持っておったぞ。吉村嘉一郎君は、あの安定ばひっさげて、秋田の戦場ば先駆けたぞ」


上P319 (前略)あの晩実際に龍馬を斬ったのは誰か(中略)

剣客はあの斎藤一をおいて他にはいないとあたしは思う。


上P335 「(前略)あんたらみんな、ひでえ了簡ちがいをしてる。女房や子供を命がけで養うのは、男の務めじゃねえのか。この世で一番、当たり前のことじゃねえのかよ。それをたったひとりだけ、真正直にやってる人に、よくもそんなことが言えたもんだ!」


上P365 「天下の壮士のお通りや、壬生義士のご出陣やで。わしらも雨に濡れてお送りせな、申しわけないやろ」


下67 獅子頭のような、あの奇妙なシャ熊の冠りものは、薩摩が黒毛、長州が白毛、土佐が赤毛と決まっておった。


下76 「そちは会津藩士ではなかろう。新撰組は会津藩御預りじゃ。予の臣ではない。去ね」

(中略)

名君のこの一言を、決して声の届かぬあの足軽に、吉村貫一郎に聞かせてやりたかった、と。せめてこの場所まで、奴を連れてきてやりたかった、とな。


下82 山河の名をひとつひとつ訊ねるうち、突然思いもかけず、胸が苦しうなった。(中略)吉村の声が聴こえた。(後略)


下102 明治初年の東京では、ともかく薩長出身の俄(にわか)役人が幅をきかせておりまして、私どもはたいそう肩身の狭い思いをしたものです。


下114 明治新政府は多くの医師を世に送り出すことを急務としてはおりましたが、また反面、済生学舎とその卒業生は、帝大閥の牛耳る医学界においては徹底的に差別され続けていたのです。

たとえば、研究医としての活躍の場を与えられずに勇躍渡米して功名を遂げた野口英世君などは、その顕著な例と、いえるでありましょう。思えば彼も、「朝敵」会津の生まれであります。


下139 「千秋。吉村先生は義のために国ば捨てたのじゃ。難しい理屈は言わんでもええ。もし万が一、藩校にて嘉一郎が責めを受くるようなことがあれば、お前(め)は身を以て嘉一郎ば守れ。嘉一郎が腹ば切ると言うのなら、お前もともに腹ば切れ。(中略)父も貫一のためだれば、いつでも命ば捨て申す。お前も嘉一郎のために命ばかけ申せ。これは組頭と組付足軽のことではねぞ。竹馬の友たれば当然のことじゃ」


下162 「千秋。わしは虫けらのごとき小身者(こもの)だども、お前のことが大好きじゃった。お前は、父が脱藩したとき、藩校の庭の老松の根方でわしをかぼうてくれた。愛染院の辛夷(こぶし)の下で、百姓のなりばしたわしのために泣いて呉(け)だ。(後略)」


下340 「(前略)わが主家は貴公らの赤心を矢楯に使うた。土方君はじめ貴公らの末期を看過することは、拙者にはでき申さぬ。(中略)せめて腑抜けの将軍家になりかわり、冥土にお供つかまつる。(攻略)」

(略)ようやっと、徳川の御家人の口からそんな文句を聞けたんだ。嬉しかったな。


下345 (前略)俺にははっきりとわかった。土方は死にに行くんだってな。

なぜかってえと、答えは簡単さ。先頭を行く馬上の土方は、一分の隙もねえほど格好がよかったんだ。

黒羅紗(らしゃ)の詰襟服に真白な晒(さらし)の帯を締め、革の長靴はぴかぴかに磨き上げられていた。


下354 「おぬし、吉村の倅だろう。(攻略)」

吉村貫一郎という名前を口にしたとたん、俺はつっ立ったまま泣いちまったんです。頭ん中はぐちゃぐちゃだったけど、吉村貫一郎ってえあいつの名前はね、まるで念仏かお題目みたいにわかりやすくって、声に出すだけで有難かったから。


下375 (前略)その御方は武人らしからぬやさしいお声で訊ねて下さんした。

お前(め)さん、死ぬるか、生くるか、と。

薩摩訛はよぐはわからねがったども、たしかそんたなことば仰せられたのす。






今回読んだ本。

「ベンチには年寄りを入れなさい」 江本孟紀
「野球エリート 野球選手の人生は13歳で決まる」赤坂英一
「長嶋茂雄 太陽の軌跡」文藝春秋





「ベンチには年寄りを入れなさい」 江本孟紀

著者の本は久しぶり。昔、ラジオの中継や「プロ野球ニュース」で解説をよく聞いた。

当時はこんなに痛快で毒舌な解説者は他にいなかった。毎日楽しみで、とても面白かった。

一時期は病気だったと聞く。お元気そうで何よりだ。

しかし、世間の変化に合わせて解説内容がアップデートされているとは言い難いようで、今や「老害」の代表格として扱われている感がある。

確かに、新しいことを情報としては知っていても価値を認めることはなく、結論はいつも「昔はよかった」だったりする。


ちなみに、老害扱いの筆頭は廣岡達朗元ヤクルト・西武監督だと思われる。

最近は岡田彰布元阪神監督を老害とする書き込みも見かける。まだそんな歳じゃないだろうと思って検索したら、もう67歳だった。

一方で、権藤博元横浜監督86歳を老害扱いしている記事や書き込みは見たことがない。発言が今でもアップデートされているということか。


私は著者には昔から楽しませてもらっているので、気持ち的には擁護派なんだけど、それでも老害部分があるのは否定出来ないと思う。苦笑

ただ、著者のこの傾向は若い頃からだ。昔から見て(聞いて)いるから分かるけど、歳を取って変わったわけではない。

元々、新しいものや変化が嫌いな性格なんだろう。

とは言え、話術は今も巧みで面白いし、時々含蓄のある良いことも言っている。


著者は高校時代に暴力事件の連帯責任で甲子園出場を辞退するはめになり、大学、社会人でも挫折続きだったそうで、その辺りのエピソードは過去から繰り返し語っている。本書でも出てきた。

そんな挫折続きの経験が、著者の一筋縄ではいかないひねくれた性格(失礼)と、一方で類まれなトークや物書きの才能を育てたのかもしれないと本書を読みながら改めて思った。


以下は印象に残ったところ。

監督とは、選手と同列の「アニキ」ではダメで、「オヤジ」でなければならない。

今の監督は「アニキ」ばっかりだ。

昔の川上監督や鶴岡親分、最近だと巨人の原監督は「オヤジ」だった。

ここで、自分の好きな人たちのことは強引に「実績は残せなかったがそれは周りのせいで、本人はオヤジだった」という評価にしてしまうのが著者らしいところ。

昔から贔屓の引き倒しみたいなことを書くので、私みたいな擁護派には「それも愛嬌」で済むんだけど、話に説得力がなくなるしアンチには格好の攻撃材料にされてしまう。


素足にスリッパを履いて球場内の食堂に行ったら金田正一に叱責された話。

これは、時代が変わっても良い話だと思った。また、著者もきちんと受け止められる人だったからプロ野球で大成したんだろうと思う。


(一部抜粋)
(前略)小泉(純一郎)首相は首都機能移転に取り組んでいて、自身の著書でも「国家百年の大計」であると書いていた。

(中略)ところが看板政策はあっという間に郵政民営化にすげ替えられ、「国家百年の大計」はどこかへすっ飛んでしまった。私は参院で50分の質問時間をもらったので、これを追及しようと試みたが、首相は鼻で笑ったのだ。

国家がどうのこうのと偉そうに言っても、結局は、選挙で勝つことしか考えていない。(後略)

※当時、著者は参議院議員だった。




「野球エリート 野球選手の人生は13歳で決まる」赤坂英一

根尾昂、オコエ瑠偉などプロ野球選手、アマチュアの有望選手を何人か取り上げている。

彼らは小学生、あるいはもっと小さい頃から家族ぐるみで野球に取り組み、高校大学、プロ野球を目指している。


昔、イチローが現役だった頃に父親(チチロー)の存在がよく話題になっていた。

子供の頃からプロ野球を念頭に置いて努力し続けるなんて凄いと思ったものだけど、今はそんな選手がたくさんいるってことか。

本人の意識も高い。

ただ、本書ではオコエだけが異色だった。そんな話も興味深く読んだ。


プロ野球のレベルアップは目覚ましい。観戦してハッキリと感じるくらい変わってきている。

そこを目指す選手たちの意識も変わっているのがよく分かった。

尤も、これは野球に限らないか。世の中は変化し、進化し続けている。




「長嶋茂雄 太陽の軌跡」文藝春秋
ムック。

2025年6月3日に亡くなった長嶋茂雄の追悼本。

私は監督時代しか知らないが、すごい人気だった。

当時を思うと、亡くなった時の報道はずいぶん少なかった。

それでも、野球人の中ではトップクラスだったけど。

熱狂的な、特に現役時代のファンはかなり年配だったり鬼籍に入っている筈なので、以前のような過熱報道はもうないんだと実感した。

今年は他に吉田義男、小山正明も亡くなっている。