人が当然知っているこまかいことをよく知らない。
シャツなどのしわを伸ばすための家電で
スチーマーというものがあると知ったのは、
1年くらいまえだった。
祖父母の家からほぼ使われていないスチーマーが出てきて
もらいうけたのだった。
当然古いスチーマーだが、
驚いたことにいまのスチーマーと
機能も形も変わりがなかった。
デザインはいかにも昭和だったが、
しわを伸ばすことに昭和も平成もない。
この機械はもらったまますぐに使われることなく
物入れで眠り続け、
1年たった今日になって
やっと日の目を見ることになった。
こんなものでしわが伸びるのかと
疑っていたことが、
今日まで放っておかれた原因である。
使ってみて、機械に悪いことをしたと思った。
疑ってごめんなさい、という気持ち。
電気で蒸気を作り出して吹き出すだけの
まことに簡単な家電ながら、
シャツのしわはよく伸びた。
しわの伸びたシャツを見ていると、
いかにいままで自分のシャツが
しわだらけであったかがわかる。
いかにみっともない格好をしていたかがわかる。
あの人、ずっとしまってあったシャツ着てる、
と傍からはまるわかりだったことだろう。
スチーマーにしてみれば、ざまあみろの展開。
もっと早く知りたかったが、
いまからでも活きるチャンスはあるかもしれない。
逃したチャンスの多さがついつい気になるけれど、
いまとなっては逃したチャンスはなかったのと同じである。
これからはこまめにスチーマーをかけよう。
もう疑っていませんのでよろしく。
