お化け本屋 | 群衆コラム

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耳目を惹きつけて止まない話題の数々。
僭越ながらお届けいたします。

東京に行くとうれしいのは


大きな本屋があることである。


地方では考えられない規模の


お化けのような本屋で


本を物色するのはたのしい。


こういう本屋だと、


ないだろうなと思った本でも見つかる可能性が高い。

 

 


本を探すだけならネットでもできるが、


実物を手に取って見ることができるのは


本物の本屋だけである。

 

だから、見たい本をいつくか探しておいて


いざ東京へ行ったときに


まとめてチェックしてくるのだが、


今回は東京へ行ったのに、それができなかった。


本屋がなくなっていたのである。

 

 


まず新宿南口にある紀伊國屋書店は、


洋書コーナーを除いて全滅。


建物の1階から5階を埋め尽くしていた本はなくなり、


かわりにニトリの家具が並んでいた。


ではしかたがない。


京王百貨店の本屋へ行くかと足を向けたが、


こちらも申し訳程度の本を残してなくなっていた。


ならば、たしか新宿東口にも紀伊國屋書店があったはずだと


歩いていったら、


こちらも本屋がなくなっていた。

 

たぶん売り上げが芳しくなかったのだろう。


どこの店がというのではなく、


「本屋」という形では商売がしにくくなってきたのかもしれない。

 

 


わたしはネットで本をよく買う。


便利だからそうしていたが、


そのせいで東京のお化け本屋は姿を消した。


きっとそうだと思っている。

 

 


東京へ行くたのしみがひとつ減った。


それは東京が少し遠くなったことを意味する。