職場にコーヒー豆があるから、
仕事終わりに毎日コーヒーを淹れる。
はじめから挽いてあるコーヒーも前からあったが、
これが淹れられるのは朝であり、
仕事終わりに淹れられるのはまれだった。
気持ちが急いている朝には
面倒が少なくてちょうどいい。
一方豆のほうは手間がかかる。
ミルを引っぱり出してきて、
ごりごりと豆を挽く。
おいしいからわざわざ挽いている、
というのもあるけれど、
この「挽く」という作業が
なんともいえず心地よい。
雑事を忘れて無心にゴリゴリと
ミルのハンドルを回す。
豆がカリカリとつぶれていく手応えと
ふんわり漂うコーヒーの香りが、
仕事終わりの身にしみる。
1日のでこぼこが
コーヒーのミルで平らにならされていく。
1日の終わりのコーヒーは
結果よりも過程で味わう。
そういう愉しみ方ができるのは、
豆だから、である。