引っ越しのシーズンである。
「もう冷蔵庫はいらないんだっけ?」
と職場の人から聞かれた。
こう聞かれたということは、
「よかったら冷蔵庫あげるよ」
という意味である。
うちにあるのは90年代に作られた冷蔵庫で
容量は80リットル。
いまどき一人暮らしの大学生でも
もうちょっと大きいのを使っている。
いま人からもらえるとしたら、
それはもう間違いなくうちのより
大きくて新しい冷蔵庫に決まっている
(たとえ中古だったとしても)。
でも、けっきょく
「それください」という気にはならなかった。
いまのよりいい冷蔵庫が来たとしても、
電源を入れる気はない。
電気を入れないならば冷蔵庫はただの箱であり、
わざわざ人のをもらうほどでもない。
それに80リットルというサイズ感が
電源を入れない冷蔵庫にはちょうどいいのだ。
冷蔵庫のコンセントを抜いてから
そろそろ3年くらいになるだろうか。
いつのまにかこんなにも
冷蔵庫のない生活が板に付いていたことが、
冷蔵庫がもらえそうになったことで
浮き彫りになったのだった。