なんども通ったことのある道が
はじめて通る道になる。
そんなことがありうる。
実家から祖父母の家まで、
物心つく前からなんど往復したかしれない。
それはほとんど車に乗って、だった。
ごくごくまれに電車を使ったこともある。
でも、全体の割合からすれば
限りなくゼロに近いくらい少ない。
そのなんども車で通った道を、走った。
車でしかいけないと思っている場所は
たくさんある。
車で行ったが最後、それ以外の手段では
むずかしいと思い込む。
いまよりもエネルギーにあふれるときはあったのに、
そのときには思いつかなかった。
ひょっとして、走れるのではないか。
そのアイデアを実行に移した。
予想は2時間。
これまでで一番長い距離を走る覚悟だった。
ところが走ってみたら、かかったのは1時間。
意外と近いところに祖父母の家があった。
祖父母の家までの道中、
小さなお社があった。
図書館があった。
何の店だかわからない店があった。
そういうものがあると知ったのは
今日がはじめてだった。