機内サービス効果 | 群衆コラム

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耳目を惹きつけて止まない話題の数々。
僭越ながらお届けいたします。

LCC、いわゆる格安航空会社のお世話になって、海外に行った。

はじめてのことである。

行ってみてわかったのは、機内サービスってすばらしい、ということである。



行き先は、タイ。

フライトは6時間だが、そのくらいどうということもない、と思っていた。

ヨーロッパまで行けば、その倍は時間がかかる。

6時間なんてあっと言う間だと高を括って、

ちょうどいい時間にあったLCCを使ってみることにした。



格安と謳っているが、どのくらい安かったのかと言いますと、

大手航空会社より2万円くらい安かった。

安くなったぶん削られたのは、サービスである。



いままで乗っていた航空会社では、

まず乗るときに好きな新聞を受け取ることができる。

席につくと、前の座席のところに自分専用の画面があって、

手もとのコントローラーで映画でもゲームでも

好きなものを選択して遊べるようになっている。

運行情報も見ることができるので、

いま現地時間は何時で、高度がどのくらいで、どの辺りを飛んでいて、

外の気温が何度くらいかを、知りたいときに知ることができる。



飛行機が離陸してしばらくすると、おつまみと飲み物が配られる。

それからまたしばらくすると機内食がはじまる。

ビーフオアチキンに代表されるように、多くの場合好きなほうを選べる。

食べ終わるころにお茶が出て、

片付け終わると思い思いに過ごす時間となる。

映画を見て過ごすもよし、ひたすら眠るもよし、もってきた本を読んでもいい。

その間にも折りをみて

キャビンアテンダントさんが飲み物をもって回ってくる。

3回くらいは回ってくると思う。

もしそれを逃しても心配いらない。

キャビンアテンダントさんを呼んで注文すれば持ってきてもらえるのだが、

ご迷惑になるのじゃないかと思って、小心者はやってみたことがない。

うつらうつらしていると、もう一回軽食がくる。

サンドイッチかおにぎりであることが多い。

これを食べるといよいよ着陸が近い雰囲気となる。

1時間もすれば、窓の外には異国の大地が広がっている。



このようにして過ごす6時間はあっという間なのである。

次から次へとできごとが起こるおかげで、時間にメリハリがつく。

メリハリがつくからこそ6時間くらいどうということもないと思える。

長い時間を短く感じさせる。

機内サービスのすばらしさってこういうこところにあるのかもしれない。



人は失ってはじめて、ものごとのありがたみと意味を知る。

LCCの機内で過ごす6時間にはまったくメリハリがなかった。

映画を見る画面もなければ、飲み物や食べものが出されるわけでもない。

正確には2回ほど飲食物を「売りに」くることはあった。

それが少しはメリハリになったのかもしれないが、

時間を忘れさせるほどではなかった。



サービスがないのは耐えられる。

でも、メリハリのない6時間は辛かった。

機内サービスの意味を知ってしまったいま、

もう一度LCCで外国に行けるかどうか、自信がない。