うますぎますし | 群衆コラム

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耳目を惹きつけて止まない話題の数々。
僭越ながらお届けいたします。

ひさびさの回転寿しはうまかった。


かつての回転寿しといえば、


皿の柄によって値段が違っていた。


いい皿にのっているものは高い。




100円の皿が白地に橙色のふちどりという


シンプルなものであったのに対して、


高い皿は全面にわたって細かい模様が入っており、


高いぞというよりも、


触るとけがしまっせという警告を発していた。


高級外車、銭湯の刺青、派手なスーツ姿、


そしてオニオコゼのような毒をもつ動物を


見たときの感覚に似ている。




いまはどの皿も平等である。


かっぱ巻きもウニも同じ白地の皿にのっている。


養殖も天然も地味なプラスチックの皿である。


おかげで皿をとる時に躊躇しなくてよい。


高級とされていて


普段はとても手が出ないようなネタにさえ、


簡単に手が届く。


回転寿しは庶民の味方、とさえいいたくなる。




ここで疑問がひとつ。


一皿100円の回転寿しはとてもおいしい。


値段としてはパック寿司と変わらないのに、


あのおいしさはなんなのだ。


パックより断然回転寿しの方が美味しい。




回転寿しはいろんなところにお金がかかっている。


店舗、回転する寿司レーン、新幹線の特急レーン、


店で働く人の人件費、光熱費などなど、


パック寿司を作って売るのに比べると、


割高になってもおかしくなさそうである。


それなのに値段はパック寿司で、


味はちゃんとしたお寿司屋さん。


こんなうまい話があるだろうか。




おいしいお寿司はそれなりに値段もいい。


それはパック寿司だとよくわかる。


500円のものは500円なりで、


1000円のものはさすが1000円なのである。


その関係に当てはめてみると、


回転寿しは値段とおいしさのバランスを


おそろしいほどに欠いている。




どうしてこんなことができるんですかと聞いたら、


お店の人はなんと答えてくれるだろう。


インドから魚を取り寄せておりまして。


そんなところかもしれない。


ああインドか、と納得してしまいそうだけれど、


そんなに遠くからきた魚が、


一皿100円のお寿司になるのは、


やっぱりおかしい。




うまい話には気をつけましょう。


昨今は詐欺が横行しているから


とくによく聞く言葉になった。


100円なのに、お寿司屋さんのようにおいしいお寿司。


これはうまい話に入らないだろうか。




夜の回転寿し屋さんは


順番待ちの人までいていっぱいだった。


家族連れでごったがえす店内。


安くておいしい回転寿しが繁盛するなら、


うまい話はなくならない気がする。