日台ハーフのシンガーソングライター、洸美さんの歌声のスペクトラムを解析してみた | プロムナード

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以前、都内の代々木公園で開催された台湾フェスタのミニライブ会場で日台ハーフのシンガーソングライター、洸美さんの歌う声にロックオンされてから、機会あるごとにその歌声を聴きに行っているのだが、青空の下でもクラブハウスの中でも、そしてカフェの中でも、ハイトーンで透明感のある安定した歌声は少しも変わらないのが魅力である。

この癒し系な優しい歌声は、どこに秘密があるのだろうか。それを物理的に探るべく音声の周波数成分データを取り、解析してみた。

 



 

周波数の解析にはスペクトラムアナライザー、通称「スペアナ」が必須だが、高級な機種は手元にないし、今回は手軽に調べてみようと思ったのでパソコンアプリでメジャーな簡易型のスペアナアプリであるWave Spectraを使用した。簡易型なので測定結果に誤差があることは否めないが、正確な値を計測することが目的ではなく、歌う声に含まれる基本波と高調波の相対的関係を知ることが目的なので誤差の影響はごく僅かだ。。

音声の解析を行う上では、歌う楽曲から肉声のみの部分を抽出する必要があるが、候補としたのはCDアルバム「五月雪」に含まれている、音声の抽出が比較的楽な「ウミネコ」を用いた。この曲は、先月末に彼女がスタッフとしてヘルプしている下高井戸の「台湾カフェ美麗:MEIL」でのライブでも歌われた曲である。

解析するに当たって抽出した箇所は、他の楽器の音が混ざっていない部分として、開始からおよそ1分20秒当たりの箇所をwav形式でリッピング(44.1kHz/16bit)し、スペアナで解析した。それがこの写真である。グラフの上部半分が横軸を時間経過とする表示で、縦軸は音の大きさを表す。グラフの下半分は横軸を周波数とする表示で、横軸は周波数を対数で表示している。それぞれの周波数に於ける音の強弱と考えてよい。

楽曲に於ける抽出部分の音階はド♯で、音階名はC#6、ピアノ鍵盤番号は65だ。この音階周波数は1108.731Hzとなっているのだが、それに対して洸美さんの歌声の音階測定結果は1109Hz。測定には誤差があるので、それを鑑みればドンピシャだ。さすがである。

 



 

この音声を時間軸で波形をみると、写真上部の様にかなり正弦波に近い波形が得られている。正弦波の音は、ラジオの時報に代表される様な耳障りのない、自然な音だ。洸美さんの歌声が柔らかい癒し系な音声になっているのは、このためでないかと思われる。

 

正弦波を信号発生器で生成し、スペアナを通すとこの様になる。

 



 

もちろん、洸美さんの音声は正弦波ではないが、正弦波に高調波が多重化されて実際の洸美さんの音声となっている様だ。このとき、正弦波の高調波の成分が多いと、正弦波が矩形波に近い波形となって音は固くなる。更にそれ以外の様々な周波数成分の音が多重化されると、音はノイズに近い音になっていく。解析データを見ると、四次を超える高次高調波要素が少ないこと、ノイズとなる周波数成分が少ない事が分かる。

高調波成分を見ると二次高調波:2217.9Hz、三次高調波:3327.4Hz、そして四次高調波の4430.9Hzが観察される。音楽の世界で言われる「倍音」だ。これが多いと「よく通る声」と評価される様だが、多いか少ないかよりも、基本波との比率なども重要な要素だろう。洸美さんの場合、二次、三次、四次の音圧は基本波と同じくらいのエネルギーを持っている様だ。これ等の周波数の音が基本波と共鳴し、大きなエネルギーを得てコヒーレントな音声となり、結果、よく通る声として遠方まで伝わっていると考えらえる。いわば「レーザー光の様な声」ともいえそうだ。


それと特筆すべきは、1109.0Hzの約半分である559.9Hzと、その三次高調波と思しき1680.8Hz、そして、よくわからない2767.0Hzと3890.5Hzというピークが見られることがある。この基本波とその高次高調波並びにこれらの独自の音との合成音が洸美さんの癒し系な発声音の特徴になっているのかもしれない。

この解析に用いた楽曲はこれ。ただし、使用したのはオリジナルCDである。ネットにアップロードされている方は圧縮されていると思われるので、データ解析には使えない。

https://www.youtube.com/watch?v=GY1wzWDnFp0

ネット上には、色々な楽曲がアップロードされているので是非試聴して欲しい。聴けば、その類い稀な癒し系の歌声に魅了されることは間違いないだろう。今後、更に別のアプローチにて独特の音声を解析してみると、更なる新たな要素が見つかるかもしれない。