乃木坂46の33rd シングルのタイトルは、「おひとりさま天国」。
題名は少しアレだが、ノリのいい曲で覚えやすいし、何といっても当初からコールの方法が提案されているのは画期的だ。コロナ禍にあって、暫くの間は無観客だったし、解除されても当初は声出し禁止、つまりコールはご法度という、コールこそがライブの楽しみだったファンにとってはまさに拷問にあっている様なライブ参戦だったから、そこからの解放という意味でも、コールの提案付といういうのはアイデアだろう。実際、コロナ禍中の楽曲は、解禁となったあとの今、かなり統一性がない感じがする。もちろん、それはそれで良いのだが、観客の声がぴたりと合うのは心地良いものである。
今回、神宮球場で開催された、「真夏の全国ツアー」、通称全ツに参戦したときに、メンバーの煽りに乗って観客たたちが統一されたコールを打つのは久しぶりであったし、これこそライブの醍醐味だと改めて認識した次第であった。
ところで、おひとりさま天国での井上和の掛け声、歌詞を見ると”It's the single life"となっているのだが、自分はあの歌詞の脈から言うと”It's a signle life"じゃないかと思っている。そこで、大学で英語の教鞭をとりつつ乃木坂46ヲタでもある友人に聞いてみたので、ここにメモっておく。
彼の話によると、文法的にはどちらでも何ら問題はないのだが、やはりニュアンスは異なるという。
具体的に言うと、
”It's the single life"は、「既婚と未婚」という比較に於ける未婚という意味が強いのに対し、”It's a signle life"は、様々な選択肢の中の一つとしてSingle、未婚もあるし一人暮らしという意味もある。つまり、"One of them"的な意味合いが強いというのだ。
従って、あの歌詞の前後脈からいうと、既婚vs未婚という比較というより「色々な人生があるが、自分なりの生き方とかやり方でやる~」という歌詞の流れでもあるので、恐らく”It's a signle life"の方がふさわしいかもとのことだった。
ただ、”It's the single life"も決して間違いではないので、それも選択肢の一つとして含めてもっと広い意味で”It's a signle life"の方がふさわしいかな、という意見だった。
作詞をした秋元康氏がどこまでの意味を含めて使い分けているのかは分からないが、定冠詞/不定冠詞のない日本語では表現されないニュアンスを含むことなので、その違いを感覚的に理解することは難しいし、作詞する上での前提が分からないので真意は分からないのだが、色々と詮索してみるのも楽しいものだ。
そう言えば、かつてソニーの”It's a SONY"というCMがあった。今から20~30年くらい前の話だが、当時、SONYという固有名詞に何故"a"が付くんだろうと思い、当時付き合いのあったSonyのエンジニアに聞いてみたところ、「あなたの前にある製品は、数あるブランド製品の中のソニー製品ですよ」というニュアンスだと言っていた。
なるほど、"a"にはそういう意味があるんだ。それを考えると、おひとり様天国は”It's a single life"の方がしっくりくるような気がする。
歌っている井上和も、良く聞くと"It's A single life"と掛け声をかけているように聞こえる。乃木坂46には清宮レイという米国西海岸、Foster Cityで育ったバイリンギャルがいるので、彼女からのアドバイスがあったのかもしれない。
とにかく、英語の"a"と"the"という不定冠詞と定冠詞の違い、また単数形と複数形の使い分けなど日本語にはない決まりは、なぜ使い分けているのかなど、日本語とは違う価値観などが見え隠れして大変興味深い。